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追悼・浅草のチェリーさん

浅草を歩くと、いつもそのひとがいた。六区のマクドナルドあたりに、小さなからだを独特のセンスの服で包んで、ふらふらと立っていたり、道端に座り込んでいたり。チェリーさんとも、さくらさんとも、あるいはただ「おねえさん」とも呼ばれてきたそのひとは、道行く男たちに声をかけ、からだを売る、いわゆる「立ちんぼ」だった。だれかに声をかけたり、かけられたりしているところを見たことは、いちどもなかったけれど。ほとんど浅草の街の風景の一部と化していた彼女が、亡くなったらしいと聞いたのは去年の年末のことだった。

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ハダカの純心――あるストリッパーと医者の恋物語

いまは一時更新を休んでしまっているが、うちにあふれる本を、探しているひとに直接届けたいという思いから、「e-hondana」という自前のネット古書店を開業して、もう数年になる(近々メルマガのサイトに統合する予定なので、乞うご期待)。そこに出品していた成人映画の資料集を欲しいと連絡してくれたひとがあり、「亡き妻が成人映画に出ていたので、その資料を探しています」と言うので、本を届けがてらお話を聞かせていただくことになったのが、いまから2ヶ月ほど前のこと。行きつけだという、伝説のストリッパー浅草駒太夫の店『喫茶ベル』のカウンターでお会いした...

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ハダカの純心――あるストリッパーと医者の恋物語2

先週の前編に続いて送る医師と、偶然出会ったストリッパー・芦原しのぶ(通称カメ)の、オトナの恋の物語。北の漁港のキャバレーでふたりは知り合い、東京で再会。お互いに惹かれあって、彼女の小さなアパートで『神田川』の歌詞そのままの同棲生活が始まった。そのとき永山さんは26歳、芦原さん30歳。しかし1960年代の東京で、医師とストリッパーという若いふたりの前には、さまざまな困難が待ち受けていた・・・。

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秘宝館の女

今年の3月、銀座ヴァニラ画廊で兵頭喜貴さんとギャラリー・トークをしたときのこと。「おもしろい女を連れて行きますから」と兵頭さんが言うので楽しみにしていたら、着物姿で、背中に見覚えのある秘宝館のチンマン・マークを背負った女性が現れた・・・「都築さん、これが北海道秘宝館のロウ人形を買った女ですよ」「えっ!」「奥村と申します、よろしくお願いしますぅ(微笑)」「こ、こちらこそ・・・」。奥村瑞恵(みずえ)さん、36歳。パートナーの菊地雄太さんとふたりで「特殊造形製作」という特殊な職業に従事しながら、秘宝館好きが嵩じて、ついに閉館した北海道秘宝館のロウ人形その他を買い取り。現在は自宅に安置、修復に励んでいるという恐ろしい情熱の持主である。ぜんぜん、そんなふうに見えないのに・・・。

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酒と注射針と精液の街で

「セックス、ドラッグ&ロックンロール」という言葉がいまだ有効であるならば、それが世界でもっとも似合う場所はニューヨークでもLAでもロンドンでもなく、ハンブルクであるにちがいない。ベルリンに次ぐドイツ第2の都市であり、ドイツ最大の港を持ち、『ツァイト』『シュピーゲル』『シュテルン』なども本社を構えるメディアの中心であり、人口あたりの資産家の割合がいちばん高い、ドイツでもっとも裕福な都市であるハンブルク。そして市内ザンクトパウリ地区にあるレーパーバーンは、ヨーロッパ最大の歓楽街でもある。歌舞伎町を3倍ぐらいに引き伸ばして、もっとあからさまな売春と、庶民の暮らしをぐちゃぐちゃに混ぜ込んだ、他にほとんど類を見ない、朝から翌朝まで酔っ払ってる街。それがレーパーバーンだ。

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レーパーバーンで『カンパイ』2

「ヨーロッパの歌舞伎町」ハンブルク・レーパーバーンで今夜も、酔っぱらいドイツ人相手に店を開く寿司屋「KAMPAI」。こころ優しき大将・榎本五郎(通称「エノさん」)のドイツ人生劇場、今週は疾風怒濤編! お待たせしました!

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アナーキーゲイシャ・キス・キス!――エロチカ・バンブーの踊り子半生記 前編(写真:多田裕美子、都築響一)

ラブホテルと外人売春婦と熟女風俗・・・東京でいちばん魑魅魍魎が跋扈する街のひとつである鶯谷に降り立つ。駅から徒歩1分、1969年にできたグランドキャバレー・ワールドは、いまでは東京キネマ倶楽部という名のライブハウスになっているが、5月16日の今夜だけはグランドキャバレーの残り香が、ほんの少し帰ってくる。バーレスクやピンナップ・カルチャーを発信するウェブサイト「BAPS JAPON」5周年イベントとして、人気バーレスク・ダンサーたちが集結する『バーレスク・オー・フューチャラマ(Burlesk-O-Futurama)』が開催されるのだ。

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25年目のTOKYO STYLE

あれから四半世紀のうちに、僕にもいろいろあったし、部屋主のひとりひとりにもいろいろあったろう。撮影させてもらった人の多くは、あとがきに書いたように付き合いがなくなってしまったり、音信不通だったりしたのだが、このところFacebookなどのSNSや各地のトーク会場、打ち上げの場などで「再会」する機会が増えてきた。お互いの無事を喜び、思い出を懐かしみながら、「四半世紀たったいま、みんなはどういう暮らしをしているのだろう」と気になって、覗き見したくてたまらなくなった。ちょうど25年前に、みんなの暮らしを覗き見したくてたまらなくて、カメラを買いに走ったように。これから毎週、というわけにはいかないけれど、なるべく頻繁に、かつて撮影させてくれたひとたちを訪ねて、いまの暮らしを見せていただこうと思う。「25年目のTOKYO STYLE」がどんなふうになっているのか、ご覧いただきたい。四半世紀を隔てた彼らの昔と今。それは僕ら自身の25年間でもあるはずだから。

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25年目のTOKYO STYLE 02 湯浅学

『TOKYO STYLE』が最初の大判写真集として世に出たのが1993年。実際に撮影で東京都内を原チャリで走り回っていたのが1991年あたりだったから、今年はあれからちょうど25年というタイミングで、当時の部屋主たちを再訪する新連載。第1回からちょっと間が空いてしまった第2回は、前回の部屋主・根本敬と共に「名盤解放同盟」を支えてきた盟友でもある音楽評論家・湯浅学宅からお送りする。西麻布・新世界で続けてきた連続企画『爆音カラオケ』でも毎回ゲスト役を務めてくれた湯浅くんは1957年生まれ、いま59歳。来年還暦を迎えることになる。新刊『アナログ穴太郎音盤記』(音楽出版社刊)を出版したばかりの5月半ばの週末、「この日なら家族が揃うから」という文京区・護国寺に近い静かな住宅街の一軒家を訪ねた。

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ラバー・ソウルふたたび

毎年5月6日の「ゴムの日」にあわせて開催される、デパートメントH『大ゴム祭』。言わずと知れた日本でいちばん古くて、いちばん大規模でフレンドリーなフェティッシュ・パーティの、いちばん人気のイベントのひとつだ。本メルマガでも2012年5月9日号、2013年5月8日号と紹介してきたが、ここ2年ほどは開催日に東京にいられなくて取材断念。なので今年のゴム祭(6月4日開催)をまたここで報告できて、ほんとうにうれしい。ちなみにデパHの「大ゴム祭」は今年がすでに7年目。デパH自体、すでに20年以上続いているパーティである。オーガナイザーのゴッホ今泉さんをはじめとする、デパHクルーの献身的な努力には、つくづく頭が下がる。今年のデパHゴム祭も、恒例の全国から集結した「ラバリスト」たちのお披露目、海外公演で大成功を収めたラバー工房・池袋KURAGEのファッションショー、そして今年の目玉はやはり本メルマガでも以前紹介したラバー・アーティスト・サエボーグの大がかりな新作『Pigpen』(豚小屋)。

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古くて新しい古い家

今年2月8日号で紹介した、北九州市若松のグランドキャバレー・ベラミの物語には、予想以上の反響をいただいた。記事中ではベラミのステージを飾ったダンサーや芸人たちの写真と共に、もともとキャバレーの従業員寮だった「ベラミ山荘」を紹介したが、そのオーナーが文中で「Fさん」と書かせてもらった古家さんだ。と子供3人の家族を支える主婦であり、パートでも働きつつ、古い家を買っては貸している「古家商」を名乗るその活動は(なので「古家」は仮名です)、僕らが抱く「大家さん」の先入観からかけ離れたユニークなスタイルだし、これからの都市型生活への重要な啓示でもある。今週は「古家業」という、文字どおり古くて新しい生活のプラットフォームづくりを紹介させていただく。

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高原パン屋は行くよ(文:鈴木里子 写真:都築響一)

山梨の小淵沢にすごく美味しいパンを焼きながら、広すぎる古民家にひとりで住んでて、寒すぎる厳冬期は庭に枯れ枝を組んだ小屋をつくって寝てる、まだ若い女性がいる――そう友人が教えてくれて、すごく会ってみたくなった。小淵沢の瀟洒な別荘やリゾートホテルはたくさん知っているけれど、わざわざそんな過酷な暮らしを選ぶのって、どんなひとなのだろう。建築やインテリアの取材が多い鈴木里子さんと、半分わくわく、半分おそるおそる、初夏の小淵沢を訪ねてみた。

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1968年という「いま」

先週短くお知らせしたように、いま千葉・佐倉の国立歴史民俗博物館で『1968年―無数の問いの噴出の時代』という注目の展覧会が開催中だ。会期があと数日となってしまった時点で申し訳ないが、あらためて紹介しておきたい。全共闘、ベ平連、成田三里塚、水俣・・・けっして派手でもなく、ましてインスタ映えする展覧会でもないのに、僕が訪れた週末も予想をはるかに超える観覧者で大盛況だった。当時を懐かしむ60~70代のひとたちも多かったけれど、1968年には生まれてもいなかった若いひとたちの姿もずいぶんあった。

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よし子さんのいた街 2

阿佐ヶ谷のバー「山路」を40年以上もやってきたよし子さんには、長い常連さんがたくさんいた。そのひとりが写真家の島田十万さん。『レポ』という季刊誌に「よろずロックバー 山路」という記事を寄稿しているのをダウンタウンレコードの展覧会で見つけ(2014年『レポ』16号)、さっそく連絡を取ってみた。島田さんは何度かの「出禁」を挟みながら長年山路に通い、よし子さんとの時間を過ごし、たくさんの写真も撮っていてくれた。今週の「よし子さんのいた街」2回目は、島田十万さんの写真と書き下ろしのメモワールで、消え去った山路の面影を偲んでいただきたい。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 8

上海市中心部、建国西路に面する古びた集合住宅。まさかこの中に古書店があると、だれが想像するだろう。建物の入口でインターフォンを押して、ロックを解除してもらわなくては中に入ることすらできない建物に。おそらく上海でもっとも秘密めいた古書店の店主である彼は広東省出身。上海で大学生活を送ったあと、故郷に帰って税務署で働きながら、1998年ごろに友人たちと場所を借りて書店とアートスペースを開く。ナチス・ドイツ占領下のフランスでレジスタンス文学やヌーボーロマン、サミュエル・ベケットの著作などを刊行した名高い地下出版社「深夜叢書」(Les Editions de Minuit)からも数冊の作品を出版していた。彼が税務署を退職して上海に戻ってきたのは2010年ごろ。友人の紹介で月刊誌『CHINA LIFE MAGAZINE 生活月刊』で1年間、そのあと週刊誌『THE BUND 外滩画报』で編集者として働くことになった。『THE BUND』のほうがリベラルなスタンスだったし、日々変化があるほうが好きだったからというのが雑誌を移った理由。書店を始めることになったのは『THE BUND』が印刷版を廃止してウェブに特化する直前、2015年のことだった。以来、妻とふたりでの書店経営と同時にフリーランスとして小説を書いたり、小出版にも関わっている。

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8mmフィルムは銀河鉄道の線路だった――世田谷クロニクルと記憶の旅

「はな子」は吉祥寺の井の頭自然文化園にいた、もしかしたら日本でいちばん有名な(そして日本でいちばん長生きした)ゾウ。2016年に69歳(推定年齢)で死んだ彼女にまつわる記憶を、展覧会と一冊の本に封じ込めた「はな子のいる風景」を2018年04月18日配信号で紹介した。 ただのゾウの写真集ではなくて、はな子を見に動物園を訪れたひとびとから集められたはな子の記念写真や日記、写真アルバムに記されたメモなどを集めた、記憶の記録というユニークなプロジェクトを率いたのが大阪に拠点を置くAHA!(Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ)。「8ミリフィルム、写真、手紙といった、市井の人びとの記録。そんな「小さな記録」に潜む価値に着目したアーカイブづくり」に長く取り組んできた。そのAHA!による市井の記憶と記録のプロジェクト、「世田谷クロニクル 1936 - 83」がいま、リニューアルされたウェブサイト上で展開されている。

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よし子さんのいた街 1  よし子さんのコメントレコード展と汚レコード・コレクション

去年10月末の3日間、東京都江東区東陽町のダウンタウンレコードで、いっぷう変わったレコード展が開かれた。「あなたの知らないよし子さんの世界 伝説のゲイバー『山路』よし子さんのコメントレコード展」と題したその展覧会に、誘ってくれるひとがいて観に行ったのがきっかけで、僕はこの2ヶ月あまり伝説のよし子さんの世界に取り憑かれてしまった。

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よし子さんのいた街 3 (文・写真提供:わこ店主・明石さんほか)

阿佐ヶ谷のバー「山路」とよし子さんをめぐる旅の最終回となる3回目。先週の島田十万さんの文でも紹介された、山路のすぐそばにあったカウンター居酒屋「わこ」を営みつつ、晩年のよし子さんをずっと、いちばんそばで見守り、亡くなってからの整理も引き受けた明石さんに、よし子さんとの日々、よし子さんがいなくなってからの日々を振り返っていただいた。 明石さんたちはよし子さんが亡くなったあと、2020年のゴールデンウイークに「山路お見送り」、2021年には「没後5年・山路よし子さんの思い出展」という2回の追悼イベントも開いている。会場で展示された、生前のよし子さんを偲ぶたくさんの資料も貸していただけたので、明石さんの回想記とともにお目にかける。 3週にわたる連載をさせていただいた関係者、協力者のみなさまと、天国で見てくれているかもしれないよし子さんにも深く感謝したい。よし子さん、どうもありがとう! あっちでも絶妙の選曲で、神様たちを踊り狂わせてますように。

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桜の下の切腹天女

ロードサイダーズを立ち上げたばかりの2012年2月に、「烈伝・ニッポンの奇婦人たち」の第2回として、切腹パフォーマンス・アーティストの早乙女宏美さんを前後編2週にわたって紹介させてもらった(ちなみに第1回は山口湯田温泉『西の雅・常盤』の宮川高美女将)。 現在は札幌を拠点に活動中の早乙女さんから、久しぶりに連絡をいただいた。群馬県高崎市郊外に住み暮らす佐藤宗太郎さんというかたが自宅の庭で「園遊会」を開き、そこで切腹パフォーマンスをするので見に来ませんか、というお誘いだった。園遊会で切腹って……。

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新宿区立総合天然宙屯地  3 大島てる (画・写真・文:小指)

この家に引っ越してきてからしばらくした頃、私は「大島てる(管理人・大島てるさんが管理する事故物件情報共有サイト)」のサイトでこの家のことを少しばかり探りを入れてみたことがあった。ざっくりと、この辺りかな?という場所に地域を選択してみると、近所の新宿一帯は事故物件であることを表す炎マークが大炎上していた。さすが新宿、と思った。変に感心しながら、そこから更に拡大し、我が家のある場所にカーソルを合わせた。すると、どうやら意外なことに、この埴輪ハウスは事故物件には該当していないようだった。怪しい雰囲気の割には、たいしたことは起きていなかったようである。

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追悼・水原和美さん

『独居老人スタイル』に登場してくれた、僕にとっての「鳥取のママ」である水原和美さんが、今月9日に逝去されたというお知らせをもらった。ここ数年寝たきりだったけれど、あいかわらず意気軒昂でハイライトをプカプカ吹かしていた。葬儀もラスタのお客さんが担当で、出棺の曲はボブ・マーリーだったとか。最後まで水原さんらしい去り際だった。

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シブメグの人生小劇場 34  私たちの処方箋 (写真・文:シブヤメグミ)

昨年の12月19日、神奈川芸術劇場で舞台『ジャズ大名』を観た。 筒井康隆原作。 1986年には岡本喜八監督、古谷一行主演で映画化もされた。 日本は江戸の幕末。 遠くアメリカでは南北戦争が終わり、解放された黒人奴隷が故郷アフリカを目指して、自分たちが愛する楽器を抱えて船に乗り込んだ。が、嵐に遭い、小さな藩の海岸に漂着する。 そこには、ひちりきが大好きで好奇心旺盛な殿・大久保教義がいた。

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ケンケンという唄

去年の秋ごろ、新宿ゴールデン街で飲んでいたときのこと。筑摩書房のウェブで連載している『独居老人スタイル』の人探しに苦労しているという話をしていたら、「それならぴったりの独居老人でシャンソン歌手というのを知ってる!」と店主に言われて大喜び。日を改めて店に来てもらったら、どうもようすがおかしい。「あの・・失礼ですけど、いまおいくつですか?」「え、51ですけど」。えーっっ、僕より若いじゃないですか。これはいくらなんでも、「独居老人」呼ばわりするには無理がある。す、すいません・・と謝りつつ、「ぜんぜん老人じゃないじゃない!」と店主をにらんだら、「そんなに若いの、ケンケン! もっと老けてみえるし~~」と言われて、当人もがっくり。「そうなの、昔から(年より)上に見られちゃうんですよねぇ」と苦笑い。それが歌手・ケンケンさんとの出会いだった。

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ウグイス谷のラバー・ソウル

去年のちょうどいまごろ、5月9日配信号に掲載した『ウグイス谷のゴム人間』。イラストレーターのゴッホ今泉さんが主宰してすでに20年間以上、通算200回以上は開かれている毎月第1土曜日の『デパートメントH』。日本でいちばん古くて、いちばん大規模でフレンドリーなフェティッシュ・パーティで、毎年5月6日の「ゴムの日」にあわせて開催されるのが『大ゴム祭』だ。あれから早1年。「今年も新作がいっぱい出ます!」と教えていただいて、いそいそと会場の鶯谷・東京キネマ倶楽部に行ってきた。例によって舞台に群がり乗り出し、激写・熱写に夢中のカメコ諸君に混じって、美しくもビザールなラバー・ファッションの粋を撮影してきたので、じっくりご覧いただきたい。

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永遠のニューサザエ

TimeOut TokyoのWeb連載『東京観光案内所』で紹介した『ニューサザエ』。5月1日号の告知でお知らせしましたが、見ていただけたでしょうか。新宿2丁目最古の現役老舗店という重要スポットでありながら、マスターの紫苑(シオン)さんにお聞きした、あまりに激動の半生が、TimeOut Tokyoでは字数の関係でまったく書けなかったので、ここであらためてお送りしたいと。文字数1万8000字オーバー、じっくりお読みください! いまや「ni-chome」という言葉が世界語になるほど、国内外で認知されるようになった世界屈指のゲイタウン・新宿2丁目。東西南北数ブロックのエリアに、数百のゲイバーやレズバーがひしめく不夜城である。閉店(開店ではなくて)が昼過ぎ、なんて店がざらにある、歌舞伎町と並んで日本でいちばん「眠らない街」でもある。

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新連載:CURIOUS MONKEY ~見たい、聞きたい、話したい~ 01――サドゥーになった日本人(文・渡邊智昭 写真・酒井翔太)

今週から始まる新しいシリーズ『キュリアス・モンキー』。「見ざる・言わざる・聞かざる」の真逆を行こうという、気鋭のライター渡邊智昭さんによる不定期連載です。本メルマガでもすでに今年4月9日配信号で、驚愕のディスコ・バスのお話をタイからリポートしてくれた渡邊さん。今週はインドでサドゥーの世界に入り込んでしまった日本人青年を紹介してくれます。ご存じの方も多いと思いますが、サドゥーとはヒンズー教の修行者のこと。すべての所有を放棄し、決まった住居も家族も、極端な場合は衣服すら持たず、俗界を捨て、みずから定めた行を通して解脱を求める者たち。観光地でよく見かける「観光サドゥー」はともかく、初めてのインド行で、それもひょんなきっかけで、神秘的なサドゥーの世界に招き入れられてしまった若者の体験談を、じっくりお聞きください。※ 記事中、一部にショッキングな画像が含まれています。ご留意のうえ御覧ください。

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新連載 かなりピンボケ――さすらいのピンパブ放浪記(比嘉健二)

比嘉健二という編集者をご存知だろうか。『ティーンズロード』『GON!』『実話ナックルズ』など、その時代時代のアンダーグラウンド・パワーをもっとも的確にキャッチする媒体をつくりあげてきた編集者だ。僕と同じ歳でほとんどただひとり、ライバルだと勝手に思ってる同世代の同業者でもある。暴走族、ヤクザ、足立区・・・比嘉さんが得意とする分野は最高に偏ってて、最高におもしろいのだが、彼はまた「ピンパブ」=フィリピン・パブの権威でもある。年にほんの何回か、「たまには」と会って飲むとき、比嘉さんが話してくれるフィリピーナと、フィリピーナにハマったおやじたちのストーリーはめちゃくちゃおもしろくて、何度か行きつけのピンパブにも連れてってもらった。

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かなりピンボケ 2――涙のジャーニー 湯島歌合戦(比嘉健二)

おそらくこのメルマガの大多数のファンはフィリピンパブというところが、実はどんなこところなのか知らないだろう。というか、日本国民のいったい何%の人間が実態を知っているというのか? もちろん統計などあるわけないが、100人に聞いても、おそらく正解は10人もいないだろう。もっとも知らなくてもなんら生活に支障はないけど・・・。いや、むしろ知らない方が人としては間違ってはいないだろう。そして、おそらくこう想像する人も多いだろう。色の黒いやけに肌が露出した、口説けば即股を開くだらしないフィリピン女と、日本人にまったくモテない寂しいおやじたちが、傷をなめ合う場だと。日本人にモテないはほぼ正解だが、こんな想像がガッカリするくらい、実はやたら健全な空間なのだ。

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ハダカのこころ、ハダカの眼 03 花電車・鮎原かおり(牧瀬茜)

彼女の通っていた芸術系の大学の映画学科には見世物小屋が好きな教授がいて、昭和の文化と見世物小屋についての講義をしていた。各地のお祭りなどを回って興行をする見世物小屋の一座は、今はもう日本に一軒しか残っていないのだが、講義の中で教授はまだ沢山の見世物小屋があった時代に自身が撮った映像を見せながら、失われつつある昭和の良さと文化について語った。以来彼女は毎年7月と11月の靖国神社のみたま祭りと花園神社の酉の市の、大寅興行社の見世物小屋に必ず足を運んだ。大学在学中に始めたカメラマンの仕事を卒業後も数年続け、その後はモバイルの通販サイトの運営会社に入りOLをしながらも、心の中ではいつも「将来は蛇女」と、 そう思っていた。

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瞬間芸の彼方に——ドキドキクラブと写真のテロル

いまから1年かもう少し前、たしか中野のタコシェで見つけたのが、『非エロ本』といういかにも自主制作らしいペラペラの作品集だった。ペラペラなのに、発行者が六本木のおしゃれな写真画廊のゼン・フォトギャラリーだったのにも驚いたが、雑誌から引き破いたセクシー・グラビア写真に落書きという、あまりに子供っぽい、あまりにパンクで、あまりにスカムな、そしてへなへなと笑い出さずにいられない、ローファイなクオリティにすっかりやられたのだった。今年9月、東京アートブックフェアにそのドキドキクラブが出店すると聞いて会いに出かけたら、「クラブ」と名乗ってはいても実はひとりで、それもすごくシャイな青年で、作品とのギャップにまた驚かされた。

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新連載! エノさんの「ドイツ落語」01(文:榎本五郎)

今年10月15日号から3週にわたって配信、多くの読者を驚かせたハンブルク・レーパーバーンの寿司屋「KAMPAI」。1965年というから東京オリンピックの翌年、いまからほぼ半世紀前にリュックひとつ担いで、シベリア鉄道でヨーロッパに渡り、波瀾万丈の年月の末に「ヨーロッパの歌舞伎町」レーパーバーンで、10人かそこらで満席の小さな小さな寿司屋を営んでいるのが名物大将・榎本五郎=通称「エノさん」だ。「エノさん一代記」を書いてくれたドイツ在住ジャーナリスト・坪井由美子さんの文章にあったように、エノさんの店には『ドイツ落語』と題された、手製本の文集が置いてある。ご本人によれば「ドイツで出会ったひとたちを主人公にした落語のようなもの」というこの一冊、僕も読ませてもらったけれど、もうとにかくおもしろい! びっくりもして、ホロリともする! でも「出版の予定なんかありません」というから、ハンブルクのKAMPAIに足を運んで、エノさんに気に入られないと、読むことすらできない。もったいなさすぎ!・・・というわけで無理やりお願いして、『ドイツ落語』全30編のなかから数話を、本メルマガで掲載させていただくことになった。

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ハダカのこころ、ハダカの眼 06 ケンという男(写真・文 牧瀬茜)

昭和47年。カンカンとランランが上野動物園にやってきた年に、ケンはこの世に生を受けた。生まれた場所は鹿児島だと聞いている。ケンが2歳の時に両親が離婚、彼は7つ年上の兄とともに和歌山の養護施設に預けられた。施設に連れて行かれた日のことはぼんやりと覚えている。父親の運転する緑色の車に母親と兄と自分と4人で乗っていたこと、そして、施設の入り口で車を降りて外で待っているときにバナナを食べたこと。両親とはそれっきりだ。どんな顔をしたどんな人間だったのか今も知らない。

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新連載! どこのドイツでお達者くらぶ 01 ボールペン宇宙の夫婦愛 (写真・文 久保田由希)

いま世界でトレンディな都市、というとまず挙がるのがベルリン。たしかにニューヨークやロンドンの異常物価高から逃れたクリエイティブな若者たちが、世界でいちばん集中しているのがベルリンであることは間違いないだろう。でも、ベルリンに住んでるのは若者だけじゃない。「ふつうのひとたち、特に年配のひとたちが慎ましく、でも自由に暮らしている姿が、長く住むうちにだんだん見えてくるんです」と、久保田由希さんは教えてくれた。

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どこのドイツでお達者くらぶ 02 ドイツ式あたりまえ生活(写真・文 久保田由希)

市内中心部の住まいは、4、5階建ての集合住宅が基本だが、郊外まで来ると、ぽつりぽつりと一戸建ても現れはじめる。今日これから訪れるヴェルナー・ネアコンさんのお宅は、テーゲル空港からほど近い、一戸建てが並ぶ住宅地にある。ネアコンさんは1947年生まれの、今年68歳。自営で電気の配線工事を専門としている。私が今のアパートに引っ越したとき、わが家のコンセントを増設してくれた人だ。立派な口ひげが印象的で、初めて見たときはまるでZZ TOPのようだと思った。ハーレーダビッドソンを飛ばしていそうな容貌だ。ネアコンさんのような職人の生活は、私がこれまでたくさん取材してきたデザイナーやアーティストたちの家とは、まったくの別世界に違いない。何かこう、実直な生活がありそうだ。そういう暮らしぶりを覗いてみたくて、家を訪問したいとお願いした。

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アナーキーゲイシャ・キス・キス!  ――エロチカ・バンブーの踊り子半生記 後編

先週号でフィーチャーしたベテラン・バーレスクダンサー、エロチカ・バンブー。現在はベルリンを拠点に、ヨーロッパ、アメリカ、日本の舞台から舞台へと飛び回っている。白虎社の舞踏を通じて肉体表現に目覚めていった、若き日の彼女。舞踏団の資金を稼ぐために日本各地のステージでフロア・ダンサーとして踊り、旅する生活が始まった。93年に白虎社が解散した後は東京に移住。そのあたりから「旅する踊り子生活」が本格的に始まっている。ダンサーの地方巡業がちゃんと商売になっていたのは、80年代なかばから90年代初めごろまで。エロチカ・バンブーが巡業生活を始めたころには、すでにキャバレーも、フロア・ダンスも衰退の一途をたどっていたが、それでもまだ、いまよりはるかにダンサーが踊れる場所が日本の隅々に残っていた。2000年前後に彼女は『踊り子日記』という、各地で踊っていた時代の記録を残している。今週はフロッピーディスクを復元した原稿から抜粋した、「ステージから眺めた日本の夜の風景」をご紹介しよう。なお、ところどころ添えた店舗写真は、いくつかのグランドキャバレーを僕が過去に撮影したもの。文章と対応しているものではないことを、あらかじめお断りしておく。

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音大生スタイル(文:奥中康人)

このメルマガではすでにおなじみ、これまで石巻の「北村大沢楽隊」や浜松のラッパ祭りを紹介してきてくれた静岡文化芸術大学の奥中康人さん。最近お会いした機会に、「そういえば昔、こんなのやったことある!」と思い出してくれたのが、この企画。いまから10年ほど前だそうだが、当時教えていた名古屋や大阪の芸術大学の音楽専攻の学生に、自分の部屋のピアノのある風景を携帯で撮影してくるよう課題を出したのだという。そこから図らずも浮かび上がってきた「音大生スタイル」を、今回はリポートにまとめていただいた。しかし当時はスマホなどと言う便利なモノが存在しない、ガラケー全盛時代。その画像の軽さたるや、だいたい20~50KBほどで、いまのスマホで撮る画像の百分の一くらい! ここ10年で携帯写真って、すごいことになったんだなあと改めて実感。なのでお見苦しい画像ではありますが、それもまた時代感覚、ということで憧れの音大生のリアルを、じっくりお楽しみください。

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新連載! 圏外芸能人 vol.01 コミック歌手の生き方 ~さいたまんぞうという人生~(写真・文:菅原養史)

「圏外」にしぶとく生きる編集者やアーティストがいるように、芸能にも「圏外」というサバイバル・フィールドがある。今週から始まる不定期連載「圏外芸能人」。書いていただく菅原養史(すがわら・おさむし)さんは――「1980年生まれ、個性的な流れ者の漁師や肉体労働者が多く住む港町・神奈川県の三浦三崎に育つ。ひょんなことからAVの世界に迷い込み、気づけばうつ病とお付き合いしながら細々と熟女系ドラマAVの監督として10年の月日を迎えた自称・AV監督。とあるドラム奏者を被写体に自主制作ドキュメンタリーも制作中」という、こちらも圏外のツワモノ表現者。ご紹介いただく最初の「圏外芸能人」は、いちど聞いたら忘れられない芸名の、懐かしいあのかたです!

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快楽の先のどこか

某日、品川のシティホテル、ツインルーム。ベッドの上で全裸の女が、ときに声をあげながらからだをくねらせる。そこにヒゲ面、サングラス、短パン姿の初老男性がのしかかり、局部に指を這わせ、ヒゲで乳首をこすり、手の甲に生えた毛まで使って「マッサージ」を続けている。こちらは隣のベッドに座って見ているだけ。さっきから1時間あまりも続いていたセッションは、女が何度目か全身を突っ張らせてからだを震わせたあと、「じゃあここらでひと休みしましょうか」という声で、仕切り直しになった。男の名は玄斎(げんさい)。ふだんは鍼灸マッサージの店を都内で開業しながら、それとは別に「回氣堂玄斎」という名で、性の喜びによって心身の変調や歪みを治癒する「快楽術(けらくじゅつ)」を実践して、もう30年以上というマスター・セラピストなのだ。

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追悼・首くくり栲象

首くくり栲象さんが亡くなった。『独居老人スタイル』で取り上げたので、ご存じのメルマガ読者もいらっしゃるだろう。1947年生まれだからまだ70歳だろうか、いかにも早すぎる。首くくり栲象(たくぞう)さんの存在を教えてくれたのは、銀座ヴァニラ画廊のスタッフだった。「ぼろぼろの一軒家の庭で首吊りのパフォーマンスを毎月、夜にしてて、でもほとんど客が来ないから、木からぶら下がってる足の下を猫が歩いたりしてるんですよ!」と言われて、急いで「庭劇場」に行ってみたのが2011年か12年のこと。そのころ栲象さんはまだ60代半ばだったから、独居老人と言ってしまうには少々若すぎたと思う。でも、なにしろその環境と風格と、なによりパフォーマンスはまさしく「孤高」というほかなく、「独居老人のかたにお話を聞く企画で・・・」とか不躾なお願いにウフフと笑いながら応じてくれた。孤高なのに優しくて、これ以上ないほどストイックなのにだれにでもフレンドリーで、そういう栲象さんのこころのありかたに、僕はなにより惹かれたのだと思う。

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ウグイス谷のラバーソウル 2018

「恋」と「変」の字ははよく似ている。「変態」を読み間違えたら「恋態」。変態とはもしかしたら、このどうしようもない日常に恋していられるための、きわめて有効なサバイバル・ツールなのかもしれない――長いこと世の変態さんたちを取材してきて、そんな思いが強くなっている。先週土曜日、5月5日の「こどもの日」から日付が変わった6日の深夜1時、とってもオトナのイベント「デパートメントH」が幕を開けた。場所は鶯谷の東京キネマ倶楽部。先週はグランドキャバレーのお話をしたが、ここはもともとワールドという名の大箱キャバレーだった場所。通算回数2百数十回となるデパHは、もう10年以上前からキネマ倶楽部で毎月第1土曜に開催されていて、5月6日は「ゴムの日」というわけで、今夜は毎年恒例の『大ゴム祭』なのだ。

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メッシーという快楽

「ラブドールと暮らす女」ひつじちゃんに写真展のモデルを頼んだときのこと、「こんどメッシーの個人撮影モデルやるんです!」と教えられ、ダメ元で見学できるか聞いてもらったら快諾いただき、生まれて初めて「メッシーの現場」に足を踏み入れた。メッシーと言ってもバブル時代のおごりメシ要員ではなく「ウェット&メッシー」、つまり相手の着ている服をびしょびしょにしたり、いろんなもので汚したり、自分も汚れたりして遊ぶフェティッシュのこと。ウェットTシャツ・コンテストからパイ投げ、泥んこレスリングまで、みんな広義のウェット&メッシーだ。今回お邪魔したのは、メッシー界でも有名な「生クリーム部長」さんの現場。部長さんはふだん大阪在住なので、こうした個人撮影のたびにものすごい量の材料を積み込み、車で東京にやってくる。たいてい2泊3日でホテルを取り、モデルさんに来てもらって、こころゆくまで動画撮影を楽しむというスタイルだ。

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アメリカヤの記憶

TABF(東京アートブックフェア)にあわせて開いたPABF(プアマンズ・アートブックフェア)で売り子をしていたら、若い男女のお客さんに「(山梨の)韮崎から来たんです」と声をかけられた。「韮崎といえばアメリカヤが・・・・・・」と答えかけたら「私たち、アメリカヤの5階でデザイン事務所やってるんです」と言われて驚いた。『珍日本紀行』にも収録した韮崎の土産屋兼食堂「アメリカヤ」は、オーナーの星野貢さんが2003年に死去されて閉鎖。店内と同じくらいファンキーかつエキセントリックだった愛車やお墓までもすっきり片付けられたと聞いて、残念な思いをずっと抱いていたのだった。

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」4 ジャブ(写真・文:くまがいはるき)

SUPREMEの服をさり気なく着こなし、お洒落な被り物をのせてる 毎日来るのに着こなしている服が違う 古着や新作などの服をさらりと着こなすその人物は、私の店ピカスペースに訪れる 七人の侍の一人、ジャブさん 陽気な赤の自転車に乗りながら、これまた陽気に酒を飲む人物である お気に入りのマイク・タイソンのTシャツやボクシング関係のTシャツを着ている時は、さらに陽気で シャドーボクシングをしながら入店してくるのも良くある光景である ジャブさんも古参のお客さんで、6年ほどの常連 日に何度も訪れるのがジャブさんの飲み方だった 「はるちゃん サッポロ!!グラス2つ」と言い 必ずその都度わたしと乾杯する

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 1

日本では狭い部屋、小さな家を「うさぎ小屋」と言うけれど、中国ではそれが「かたつむりの家」になるらしい。数年前に中国中を熱狂させたテレビドラマ『蝸居』(かたつむりの家)には、中国大都市の住宅事情をめぐる庶民の涙ぐましい努力や葛藤や羨望や絶望が全部入りで、あまりのリアルさに突如打ち切りになってしまったのだという。オリジナル版からほぼ25年経って、なぜか今年の春に中国語版と台湾版の『TOKYO STYLE』が発売になった。「なぜいまになって?」という疑問というか当惑も感じつつ、ありがたいので喜んでいたら、中国版の出版社から「上海ブックフェアがあるので、その時期にあわせてトークイベントをやりませんか」とお誘いいただいた。提案されたトークの場所は巨大なMUJI(無印良品)上海旗艦店内イベントスペース、それにMIX PLACEという、ひとつの敷地にショップやレストランなどの機能を持った店舗がそれぞれ3階建てくらいの小ぶりな建物で集められたトレンディなスポットにある書店の2ヶ所。もちろん喜んで受けて日程などやり取りしているうちに、「どうせ来てもらえるなら、上海の部屋も撮影しませんか」という話になった。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 3

上海中心部、1928年完成というから築100年以上という文化財級のアパート。こういう古い空間が好きだという若夫婦が、全体で160平米のユニットを区切った25平米ほどの部屋に住んでいる。以前も近くの古いアパートに住んでいたが、この建物がずっと気になっていて、部屋が空いたことを不動産屋で知り去年8月に引っ越してきた。家賃は月3300元(約5万1000円)。隣には愛犬家の家族が住んでいて、キッチンとバスルームを共用しているが、「とてもいいひとたちなので問題なし」。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 4

部屋の主は上海の南に位置する浙江州の州都・杭州出身のアーティスト。ロンドンに2年半の留学を終えて、上海には去年4月に移ってきた。故郷から近いけれど近すぎない、「両親からちょうどいいくらい離れていられる距離」なのだそう。少なくとも80年以上は経っているというクラシカルなアパートは、旧フランス租界に残る典型的な戦前の集合住宅。彼女としては特に古いアパートを探していたわけではないが、上海中心部であるこのエリアがなにをするにも便利なので不動産屋に相談、一日目に案内された3つの物件のうち、ここが気に入って決めた。家賃は月に5,000元(約7万8,000円)。大家さんがとてもいいひとで、このエリアの平均は6,000元くらいなのに、1年住んでも値上げしないでいてくれている。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 5

上海中心部、淮海中路から一歩入ったフランス租界に残る、いかにも古風な洋館。三角屋根の下、3階にあたる文字どおりの屋根裏部屋に住む彼女は、上海MUJIのグラフィックデザイン部門で働いている。出身は上海の南西に当たる江西省。武漢の大学でテキスタイル・アートを学び、卒業前の4年生で上海MUJIでインターンとして働き出したのが2年前のこと。卒業後は社員として、グラフィックデザイン部門に勤めている(残念ながら顔出しはNG)。一時はユースホステル暮らしだったという彼女が、この物件を見つけたのは一昨年9月。中国最大のオンラインモール「淘宝網=タオバオ」を通して、同じ階に2部屋を使って住んでいる夫婦から借りたのだった。部屋がかなり狭いうえに、さすがに設備が老朽化しているのと、キッチン、バストイレが共同ということで、家賃は月に1650元(約2万5000円)と格安。「こないだお手洗いの水漏れがひどかったのを直したばかりなので、来年も値上げはないと思うわ」と余裕である。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 9

上海市中心部の大きな団地ブロック。エレベーターなしの7階の広いアパートを、彼女は2人の友だちとシェアして住んでいる。生まれたのは山東省、大学進学を機に上海にやってきたのが7年前のこと。そのうち1年間はアイルランドに留学していて、「でも勉強というより、外の世界を見たかったから、学校より街を歩きまわってばかりいた」。卒業論文のテーマは「ヴェイパーウェイヴ」。もともとネットから誕生した音楽形態で、過去のさまざまな音源にデジタル・イフェクトを重ねていくことで制作される、いかにも21世紀的な音楽だが、いまではそのスタイルがアートの世界にも波及しているのをご存じのかたもいらっしゃるかと。いま、多くの日本人音楽愛好家を困惑させている(?)、海外におけるバブル期シティポップ・ブームも、ヴェイパーウェイヴとかなり関わりが深い現象ではある。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 11

「八万人体育場」と呼ばれ、北京国家体育場に次いで中国第2の規模を誇る上海スタジアム(体育場)のすぐ脇、古い団地に住むロック・ギタリストである。 彼が育ったのは大連、大学進学で寧波にやってきて、2008年から上海で働くようになった。最初は広告代理店に勤めていたが、忙しすぎて音楽に時間が割けないので、別の会社に移ってマーケティング担当として働きながら、バンド活動を続けている。いまの会社も平日は出社しなくてはならないが、年に18日の有給休暇があるので、その期間を利用して練習に集中したり、海外に行くこともできる。去年(2019)は10月にヨーロッパ・ツアーをしてきたばかりだ。 彼がギターを担当するのは「上海秋天(Shanghai Qiutian)」、地元のインディ・シーンではかなり知られたロックバンドで、メンバーは彼を含めて5人。その全員が仕事を持ちながら音楽活動を続けている。

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SNSの神々 第5回 「団地の給水塔」を追い続ける男(文:吉村智樹)

SNSを通じて自己表現をしたり、収集や観察の成果を発表したり。そうして熱い支持を集めるカリスマたちに迫る「SNSの神々」。第5回目は、日本中を旅しながら、ひたむきに「団地の給水塔」を撮影し続けるUCさん(37)。給水塔高層部分の外形がズラリと並んだUCさんのInstagramアカウントが、日本はもとより海外でも話題となっている。先ごろは韓国で出版された花形インスタグラマーたちを紹介した本にも採りあげられた。UCさんは、大阪市内のとある団地に住むサラリーマン。会社勤めをしながら、団地の給水塔を探し求めて全国をさまよっている。「日本給水党党首」という肩書きをもち、団地愛好家集団「チーム4.5畳」の一員でもあり、InstagramやTwitterを有効活用しつつフィールドワークを深めてゆく姿は、「SNS時代の路上観察家」の、ひとつの理想形だろう。

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タキシード・サムライ 2

特攻隊員として散りかけ、ソ連軍の捕虜となりかけるも、持ち前の強運で無事に終戦を迎えたまだ20歳の三郎青年は、戦闘機乗りから映画屋へと、劇的に転回する人生に踏み出すことになる。暗く重い戦時の環境から抜け出した日本は、焦土と化した中でも爆発的な解放感と、あらゆる娯楽への渇望に湧きたっていた。昭和20(1945)年、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による日本統治が始まってまもなく、松竹大船撮影所製作による『そよかぜ』が戦後日本映画第一作として、8月15日の玉音放送からわずか2ヶ月後の10月10日に全国公開。並木路子が歌う挿入歌『リンゴの唄』が大ヒットとなった。洋画のほうも同年12月6日にはアメリカ映画『ユーコンの叫び』が戦後初公開。ここから昭和35(1960)年に最高製作本数を記録するまでの約15年間、映画産業は戦後の黄金時代を迎えることになる。 *今号では文中ならびに文末にて、大阪・銀座「ラモール」時代の写真や、三好氏のアイデアとセンスのつまったショップカードやPRアイテムを紹介していきます。こんな時代が羨ましいと思わずうっとりすること必須。どうぞお楽しみに!

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新連載! 蒲田リハビリ日記 第1回 色のない街 ザ・蒲田のファンキー障害者 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「圏外雑誌GON!回想録」を絶賛連載中の比嘉健二さんから「昔からの仲間で、おもしろいライターがいるから」と紹介されたのがリーサル・ウエポン金本さん。「あまり遠出ができないからだで……」と言われて地元の蒲田にうかがったら、脳梗塞のリハビリ中で、それこそリーサルになりかねない、なかなか深刻な状況。なのに「蒲田って、自分も含めて障害者や変人が多くて飽きないんですよ!」と、いたってポジティブ。おしゃべりがすごく楽しかったのでさっそく、いろいろ書いてください!とお願いした。これからしばらく隔週でお送りする「蒲田リハビリ日記」。ご自分のリハビリ記録というよりも、街全体がリハビリ中みたいな、蒲田というパラレルワールドの空気感を味わっていただけたらうれしい!

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シブメグの人生小劇場 02  新宿のラーメン王 (文:シブヤメグミ)

歌舞伎町の、なんてことないけど、私のいちばん大切な中華屋さんが閉店してしまった。 そのお店の名前は新宿ラーメン王。ロボットレストランのすぐそばの角っこにあった、ごく普通の、どこにでもあるラーメン屋さん。ホストクラブで皿洗いのバイトをしていた大学生の時に、一緒に働いてた不法就労の中国人ワンさんと、どこよりも通っていたお店。 「メグさん! ここ、ワンさんのワンね!」 と、ワンさんはこのラーメン屋さんに行くたびに、ラーメン王の王の字を指差してはしゃいでた。

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蒲田リハビリ日記 第7回  ゆきゆきて、路地裏の零細企業  それなりに楽しい低層貧民街生活 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「○○が不味いって言ったのは誰なんだよ。あんな美味いもんねぇぞ。だけどな、みんなが食いたいって思ったらヤバイから、そーゆーデマを国の偉いヤツらが流したんだ!!」と老人が絶叫すると、「はいはい。私の○は食べないでね」と中年女性が受け流す。酔いにまかせた老人の暴言はとどまることを知らず、夜になっても商店街のバカ騒ぎは延々と続いた。 数年前、ボランティア活動の一環として、蒲田周辺の商盛連合会が主催する祭りの設営を手伝ったことがある(2020年夏、コロナの影響で蒲田地域の祭事は一斉に中止された)。当時はまだ脳梗塞の後遺症で文字の読み書きができなかったため、チラシやポスターの作成は手伝えなかったが、俺のようなクズでも地域のお役に立てればと思い、ふたつ返事で参加させてもらったのだ。

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シブメグの人生小劇場 06 ハルコさんの櫛 (写真・文:シブヤメグミ)

この年末年始、自分でも驚くぐらい忙しかった。この忙しさが、遊び呆けの成れの果てなら大喜びで目まぐるしくなるんだけど、仕事だったから荒んだ。文字通り身も心も。ついでに部屋も荒んだ。ひどいもんだった。「部屋が散らかるとメンタルを病む」って話をよく聞くけど、ほんとにその通りだった。甘く見てました。 この年末年始の私、ありとあらゆるものに対して雑だった。洗濯する暇もなかったので、裸足で出かけて移動中に靴下を買って、それを履くために駅のトイレに入るってのをやった。

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蒲田リハビリ日記 第11回  デリヘル仕事術に学べ! 社長の金言――「腹でなにを思おうが自由ですが、この職場では誰に対しても、嘘でかまわないので、徹底して“感じのよい人”を演じてください」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

15年以上も署名原稿を書いていなかったため、誰も俺のことなど憶えていないだろうと思ったが、「蒲田リハビリ日記」の連載を始めた昨年の夏、一応、反響をチェックするため、遅ればせながらTwitterを立ち上げた。 といってもTwitter内をざっと巡回しただけで、しばらく放っておいたが、今日、空いた時間にどうでもいいことをつぶやいてみた。時間潰しにはなるのだろう。ただ不特定複数の人びとと仲良くできるのだろうか、社交性ゼロのこの俺(52歳)が…。

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シブメグの人生小劇場 10 横顔 (写真・文:シブヤメグミ)

マダムと初めておしゃべりしたのは、マンションのゴミ捨て場の前だった。 うちのマンションは24時間ゴミが出せる。それでも管理人さんがとてもきちんとしているので、ゴキブリが出るとか変な臭いがしてるとか一切ない。どうせゴミが溜まる場所なんだから汚く使ってもいいべ、なんて気持ちは扉を開けるとどこかへ失せる。ダンボールも新聞紙も、ペットボトルもアルミ缶も、リサイクルされるその日を待ち構えてるかのようにきちんと積まれているし、24時間ダラダラと捨てられている日常のゴミは、二重にした大きなポリ袋にピシッと詰め込まれて無臭で静かにしている。そのくらい気持ちのいいゴミ捨て場なので、自然と住民も丁寧に使う。

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バンカラ文化とはなんだったのか ――旧制高等学校記念館訪問記

旧制松本高校校舎に隣接するコンクリート造の建物が「旧制高等学校記念館」。松本高校のみならず、全国の旧制高校の資料を収集・展示する珍しい資料館だ。ここ数年、宮城や岩手に残るバンカラ文化に惹かれてきたので、なんの予備知識もないまま入館してみたら、予想外の充実内容だったので、今週はぜひみなさまを旧制高校の暑苦しいバンカラ世界にお誘いしたい! 旧制高校記念館はもともと、1981年に開館した松本高等学校記念館を母体として、「松本高校ばかりでなく全国の旧制高等学校の資料を収集し、未来への架橋となるよう、各校同窓会の協力を得て」(公式サイトより)、1993(平成5)年に開館。20周年を迎えた2013(平成25)年にリニューアルオープンしている。

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シブメグの人生小劇場 11  私のいつものお気に入り (写真・文:シブヤメグミ)

突然ですが、ほんとに突然の出来事があって入院して手術しました。 人生いろんなことが起きるなあとぼんやり思いつつ、連絡して謝罪して御礼してを一日中やってたら疲れ果てて眠りこけてた。そしてきっと普通は真っ先に連絡するであろう母親になんにも言ってなかったことを思い出し、慌てて連絡をした。

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シブメグの人生小劇場 13  B.P.M. (文:シブヤメグミ)

気持ちが滅入る毎日がもう2年近く続いている。 まったく緊急性を感じない緊急事態宣言。だって毎日の感染者数は、もうずっと4ケタが当たり前になってる。安心安全という言葉の意味を見失い、何を語っても誰も振り向かなくなったお偉いさん方の定例会見。140文字じゃ足りないのなんてわかりきってるのに、それでも呟かずにはいられない不安。本当は会って、ちゃんと目を見て頷きたいのに、我慢して「いいね!」ってする親指。「明かりが見えてます」って言ったパンケーキ好きのおじさんは、もうどこかに行く準備を始めてるみたいだ。 そんなギリギリの中で、私は意識を改めるどころか、細胞レベルから生まれ変わってしまうような映画に出会った。

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蒲田リハビリ日記 第16回  求職迷走録 2021「怪しく胡散臭い」夏の終わりから初秋へ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

深夜2時。小5から「怪しく胡散臭い人(や物事)」を追求してきた俺(今年53歳)だが、あれから40年余…いったい誰がNo.1だったのだろうか? と思い返す。真っ先にフルネームで名前をあげられるのは3人。みな甲乙つけがたいスリートップだ。彼らはどんな劣等感を抱え、どんな反動や裏返し作用から怪しく胡散臭い人物になっていったのか。ふとんのなかで、そんなことをあれこれ考えていたら眠れなくなった。内実を知れば知るほど、夭折した昔の作家が「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」といった《本当の意味》が浮かびあがってくる――。

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雪のなかのバンカラ ―― 花巻北高応援団訪問記

弊衣破帽を「へいい・はぼう」と呼べるひとが、いまどれくらいいるだろうか。弊(つい)えた衣服に破れた帽子――それはかつて日本全国の旧制高校、中学の質実剛健な校風を象徴するものとしての「バンカラ」、そのトレードマークだった。 流行華美な「ハイカラ」への対抗文化として勃興した「バン(蛮)カラ」。しかし旧制が戦後に新制となって、教育機関を取り巻く環境が大きく変わる中で、バンカラという言葉はとうに死語となり、弊衣破帽の出で立ちも日本全国の学校から姿を消して久しい。バンカラ精神がほとんど唯一生存を許されてきた応援団においても、和太鼓と肉声のみで応援を行うかつてのスタイルは、いまや多くの高校生の大会で見る機会が減っている(高校野球の総本山・甲子園大会では現在「和太鼓禁止」、ブラスバンドやチアリーディングは大歓迎なのに)。

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新連載! 新宿区立総合天然宙屯地  1 埴輪ハウスの思い出 (画・写真・文:小指)

「小指」と名乗るアーティストと出会ったのは1年ほど前だった。音楽の印象を絵にするというシリーズの展示で、その奇妙な美しさに惹かれつつ、自費出版でつくってきたイラスト入りの旅日記には、淡々とした文章のなかに、若さに似合わぬつげ義春的な昭和の哀愁が隠れていて、すっかり感心してしまった。こういうひとがメルマガに参加してくれたらいいな~と思い、喫茶店でおしゃべりしているうちに、むかし住んでいたという新宿のアパートの話にこころをつかまれ、寄稿をお願い。それからしばらく連絡が途絶えてしまい、どうしたんだろうと思っていたところ、友人の展覧会場で偶然再会。「あれからいろいろ書いてみたんですけど、書きたいことがありすぎてまとまらなくて……」と言うので、まとめなくていいからとにかく送ってください!と強くお願いしたら、4万字近い長編原稿を届けてくれた。

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新宿区立総合天然宙屯地 2 じいさんの埴輪 (画・写真・文:小指)

 ここに住み始めてから一ヶ月ほど経ったある日、驚くべき事実を知ることとなった。なんと、あのいつも家の周りに置かれている大量の埴輪は、全て下の階に住むじいさんが自作しているものらしいというのだ。ただの度を超えた埴輪好きとしか認識していなかったので、まさかこんな職人、というか芸術家だったとは、全く想像もしていなかった。大家いわく、この家にはもう何十年も前から住んでいて、こうして一人で埴輪を作りながら生活しているのだという。家族は別の場所に住んでいるらしく、ここはアトリエのように使っているようだ。こんな人は、探そうと思ったってなかなか見つけられるものではない。私はすっかり一階のじいさんに対して尊敬の念を抱くようになった。  私はじいさんのことを、尊敬と親しみをこめて「埴輪のじいさん」と心の中で呼ぶようになった。

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新宿区立総合天然宙屯地 4  埴輪ハウスに集う動物たち (画・写真・文:小指)

最初の異変に気づいたのは、ここへ引っ越して間もない頃のことだった。ひとりで部屋にいると、天井裏から「パタタタ……」と小さな足音のようなものが聞こえるのだ。私はテレビの音を消し、耳をすませた。  パタタタタ……  やはり何かがいる。だが、この家には私と埴輪のじいさんしかいないはずだ。一瞬、江戸川乱歩の小説「屋根裏の散歩者」のような屋根裏を徘徊するじいさんの姿を想像したが、下の階からジャーっとトイレを流す音がしたので、やっぱり上から聞こえてくる足音はじいさんのものではないようだ。

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シブメグの人生小劇場 19 『アンフォゲッタブル』 (写真・文:シブヤメグミ)

明日はなにしよっかなー。 なんでもないことを考えながら眠る夜がなくなった。 そのかわりと言ってはなんだけど、 感染してなくてよかったなー。 こんなことを呟いて眠る夜が増えた。 いとも簡単になかったことにされるライブがあった。 楽しみにしていたはずなのに突然気が重くなる約束があった。 会いたかったひとが会わない方がいいひとに変わった。 こんな不安定な中で撮られていたのが、映画『劇場版 おうちでキャノンボール2020』だ。

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シブメグの人生小劇場 22  懺悔の値打ちもない 第2章 母・フサエ (文:シブヤメグミ)

私が生まれた時、あんたのおじいちゃんは三日三晩寝ないで私の名前の漢字を考えてたんだって。 そのくらい溺愛された3番目の子供だったから、兄妹の中でもエコ贔屓されてた。 食事のおかずをね、おじいちゃんは必ず私に最初に取り分けてくれてたの。卵焼きは美味しいと思うところを、焼魚は身と骨をバラバラにして食べやすくしてくれたりね。 高校進学の時にも特別扱い。 ある日の朝、地元の公立ではなく、横浜の私立の女子高を受験しろって突然言われた。 上の姉がそれを聞いて、熱っついアイロンを振り回して激昂してねー。「どうしてお父さんはフサエにばっかりいい思いさせるの!」って。

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シブメグの人生小劇場 23  懺悔の値打ちもない 第3章 事務員・バンビ (文:シブヤメグミ)

本名より、バンビとかバンちゃんって呼ばれてる期間の方が長くなっちゃった。 いま85歳だから、もう60年は呼ばれてきた。人が産まれてから還暦になる長い間、ずっと私はここにいたのかって思うと目眩がするわね。 婚約者がいたの。 高校の頃から付き合っていたんだけど、その人が真面目な人でね、 「家業を継ぐから、僕のお嫁さんになってくれ。その日までちゃんとしておきたい」 って20歳の誕生日に言ってきて、両家のご挨拶とかもちゃんとして指輪まで買ってくれたの。ちっちゃーいダイヤが真ん中にちょんって埋め込まれてて、それが可愛らしくってね。薬指を見るたびに、嬉しくてたまらなくなってた。 それから少しして、生理の出血がおかしくなるの。

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蒲田リハビリ日記 第20回  遊廓の童  故郷・名古屋市北区に「城東園」があった頃 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

2014年に脳梗塞を患って以降、脳外科で常用薬を調整してもらってきたため、その12年前(2002年)に心臓病(大動脈解離)を患っていたことを、忘れていたわけではないが…、どこか二の次になっていた。昨年の暑い夏、ふと思い立ってエコー検査を受けたところ、数日後、主治医から直々に、こういった内容の電話連絡が入る。「そろそろ入院できるようになってきたので、ぜひ再検査してほしい!」と。自覚症状は特になかったが、嫌な予感がしないでもない。すぐに死ぬことはないと思うが、つい我が人生を振り返ってしまう。 地方(愛知県名古屋市北区)の低層貧民街で生まれ育った俺だが、思えば中3の終わり頃から20代後半まで、ずっと周囲の人に恵まれて毎日がとても楽しかった。感謝しかない。悪趣味雑誌『GON!』の末席ライターとしてスタートした俺だが、その25年後には都築響一さん主筆のメルマガ"ROADSIDERS' weekly"でも連載(不定期)を持たせていただき、もはや人生に思い残すこともない。

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シブメグの人生小劇場 28  『天使』 (写真・文:シブヤメグミ)

天使はお弁当屋さんにいた。 新宿の花園神社近く。 路面店にいた。 天使はおじいさんだった。 「ありがとうございます」 「午後も頑張ってね」 レジに頭をぶつけちゃうよって言いたくなるくらい、深くお辞儀してこう言ってた。 新宿の真ん中だから、ホストやキャバ嬢たちが酒臭い息で遅い朝ご飯を買いに来ることも多い。 すると天使は、 「二日酔いなのに揚げ物いっぱいのお弁当でいいのー?」 って、声をかけてた。

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シブメグの人生小劇場 29  仰げば尊し (写真・文:シブヤメグミ)

お元気ですか? 先生が亡くなって何年目なのかなあ。 「俺が死んだあと、命日をもうひとつの誕生日みたいにしないでくれよな」 ホスピスに初めてお見舞いに行った日の帰り際、そう言ってましたよね。 先生、笑顔だったけどすごくすごく真剣な声だった。 私、ゾッとしたんですよ。 でも、だからこそ、死んでから何年目かな?なんて一度も数えてないです。 中学校に入学した私のクラス、1年1組の担任。 それが出会いでした。

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シブメグの人生小劇場 30  すき家で朝食を(パレスチナで起こっていることについて思う) (写真・文:シブヤメグミ)

深夜バスで大阪から新宿に帰ってきた、何年か前の早朝。 お腹すいちゃって、朝食を食べようと入った新宿駅南口のすき家。 こんな早朝なのに1階がなんだか混んでたので珍しく2階に上がったら、外国人ファミリーが楽しく賑わってた。上手く使えないお箸すら、アトラクションみたいにはしゃいでいる。 私は、いい東京の朝だなーなんて思いながらお味噌汁を飲んでた。 そしたら、 「エクスキューズミー、スピークイングリッシュ?」 と声をかけられた。 私の語学力を理解して頂きたいという思いを込めて、リトルならスピーク、バット、ブロークンイングリッシュオンリーですって答えたら、 「ソーグッ!ベリナイス!」 って言ってくれた。

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新連載! おいでよヘンタイの森 | 文・イラスト:mimi(会社経営&フリー女王様)

生足あらわな太ももをグッと締めたあいだに挟まれ、醜く顔を歪ませた男たち……。広尾のお洒落なギャラリーで出会った笑撃的な写真の撮影者であり、太ももの主がmimiさんだった。 2014年1月15日号「挟む女」で紹介したmimiさんは茨城県古河市出身。高校卒業後、美容学校に進んだことからAVのヘアメイクにかかわるようになり、そこで「男のひとを責めるだけの仕事があります」と出会い系で(笑)誘われて、いきなりフリーの女王様になった。SMには興味すらなかったのに。 だからボンデージ・ファッションとか身につけたこともなく、普段着でプレイに行ったりしながら独自のスタイルを確立。リピーターが増えて貯まった資金で、自主制作AVまでリリースしたりしたのが23歳のとき……。

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ウグイス谷のゴム人間

深夜3時、日付が変わって5月6日になった鶯谷の「東京キネマ倶楽部」。舞台を埋めつくすのはピーコックのように、レインボーのようにカラフルなゴムの衣裳を着込み、というより全身に被せて、思い思いのポーズを決める60人近くの「ラバーフェチ」。そしてその足元に群がる、さらに多くのカメラマン、というよりカメラ小僧。なんでラバーなのかって? それは5月6日が「ゴムの日」だから。そしてここが月にいちどの『デパートメントH』だから!

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連載:スナックショット 19 石川、福井(平田順一)

どうも平田です。卒業に就職に人事異動に契約更改、年度が替わって落ち着かない4月の1回目は開店祝いの花輪を巡る旅です。十数年まえに富山県で廃線の危機にある鉄道に乗って探索していたところ、沿線の街のスナックの佇まいに惹かれ、観光ガイドに載らないような街の風景を求めて全国各地を記録して歩くようになりました。これをスナックショットの第1回に書きましたが、厳しい気候風土のなかで培われた北陸地方の街並みはとりたてて魅力的に映ります。しかし時期によっては、ビル全体を埋め尽くすくらいに花輪を飾ってあるのは何故でしょうか?

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追悼・濡木痴夢男

すでに数々のツイートやブログなどで書かれているように、濡木痴夢男さんが亡くなった。8月中旬に呼吸困難で倒れ、9月9日に永眠。故人の強い希望ということで、お身内だけで葬儀を済ませたあと、こちらにもようやく知らせが回ってきたのが、9月中旬のことだった。1930年のお生まれなので、83年の生涯ということになろうか。濡木痴夢男(ぬれきちむお/本名・飯田豊一)はご存じの方も多いだろう、SM小説家、縛り師として、日本のSM美学をここまで完成させた、最大の功労者のひとりである。

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ハダカのこころ、ハダカの眼 02 上野のおいどん(牧瀬茜)

不忍池からほど近い、飲食店が並ぶ通りに建つ雑居ビルの地下1階に、ストリップ劇場がある。表には「シアター上野」と赤い字で大きく書かれた、黄色の角型の電光看板が置かれている。踊り子の写真が壁いっぱいに貼られた狭い階段を下りると受付があり、その先にはたたみ1畳ほどの通路兼喫煙所がある。そして、その奥の黒い扉の向こうが場内だ。客席は30ほどあるだろうか。40人も入れば満杯で身動きできないほどになってしまう。そんなときに後方の席や立ち見になると、人の頭と頭の隙間から踊り子の手の先やら頭やお尻や背中なんかがちらりちらりと見えるのだそうで、それはまるで覗き見をしているような感じなのだ、と客の一人が話していた。

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かなりピンボケ 3――フィリピーナは休みの日に何をしているのか? 哀愁のシーフードヌードルと地獄の教会編(比嘉健二)

フィリピンパブで夜働いているフィリピーナはオフタイム、休みの日にいったいどういう過ごし方をしているのか? おそらく常識ある一般人の方はまったく想像がつかないであろうし、そんなことを知りたいとも思わないだろう。ただ、あえて今回このテーマにしたのは、フィリピンパブという空間に常識人も突然ハマる、もしくは転落する可能性がけっこうあるからだ。そうなってしまった時、このコーナーはおそらく偉人の啓蒙書のように感じられることだろう。

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かなりピンボケ 04 さよならパーティー おやじの涙とフィリーピーナの涙、その意味はまるで違う(比嘉健二)

フィリピンパブのせつなくて滑稽なイベントとして、1)自分の誕生日、2)クリスマスパーティー、3)さよならパーティー、この3大イベントがあげられるが、なかでも「さよならパーティー」のおかしさ、悲しさ、むなしさはそこらへんの恋愛小説やドラマよりはるかに面白く、奥深い。ただ、残念ながらこの「さよならパーティー」は今ではあまりみられなくなってしまった。というのも2005年にタレントビザの規制が強化され、フィリピンからそれまで大量に来日していた、タレントの来日が厳しくなってしまったのだ。

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新連載! 老遊女 01(中山美里)

ほとんどストリップ業界のオフィシャル・フォトグラファーのような立ち位置で、激減するストリップを撮り続ける写真家が谷口雅彦さんだ。その谷口さんとおしゃべりしていたとき、「前に『漂流遊女』っていう連載をしてたことがあって、その続編をやりたいんですけど、どの雑誌もウンと言ってくれなくて・・」と嘆くので、企画内容を聞いてみたら、AVや風俗で働く老女たちを訪ね歩きたいのだという! 谷口さんが写真、フリーライターの中山美里さんがテキスト。だいたい一般誌で取り上げられないネタを引き受けるのがエロ雑誌だけど、エロ雑誌ですら引き受けられないネタ・・・それはメルマガしかない! というわけで、これから月にいちどのペースで想像を絶する、しかもどこか愛おしい老女たちの生きざまをご紹介してもらうことになりました。

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老遊女 03 3億円の宝くじ当選を夢見る、恋する老遊女 後編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

ちなみにそのバッグの中には、財布や携帯、図書館で借りた本、チラシ、ポイントカード、病院の診察券などが入っている。大事なものや今使っているものなどだ。つまり宝くじは、沢村さんにとって、財布や携帯とともに持ち歩くほど大切なものだということになるだろう。「これで逗子に土地を買うのよ」3億で土地を買い、建物を建て、現在つきあっている5歳年下のIさんという男性と一緒に介護ビジネスを始めるのだと語り始める。

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ハダカのこころ、ハダカの眼 04 絵描きの日田さん(写真・文 牧瀬茜)

「ストリップが新聞で取り上げられるなんて摘発のときだけですからね。画期的なことだと思います。素晴らしいことです」少し興奮した様子の日田さんは、胸の内ポケットから手帳を出し、その中から丁寧に折りたたまれた紙片を取ってテーブルの上に広げた。それは、数日前に某大手新聞の文化欄に載った5センチ×6センチほどの記事の切り抜きだった。『時代に踊ったストリッパーを撮り続けた元興行師の写真展』、そんな見出しだった。

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老遊女 04 5億稼いだシャブ中ソープ嬢の穏やかな老後(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

以前、『F』というAVプロダクションがあった。全身に和彫りの入ってるメンタルを病んだ女性や、まだ19歳なのに30歳過ぎの中年にしか見えないブクブクに太っている女性など、「この人たちは本当にAVに出られるんだろうか?」という女性ばかりが入っているスゴイ事務所だった。『F』を知ったきっかけは、私の夫(元コアマガジンの編集者)が、『マッドマックス』という雑誌で、その名も『スゴイAV女優』というタイトルの地雷女の宣材(メーカーなどに持っていくプロフィールシートのこと)をただ並べるだけという企画をやったことがあり、ちょうど私がインタビューしてみたいと思っていた女性が『F』に所属していたため、紹介してもらったのだった。ちなみにその企画の際、もっともたくさんの宣材を提供してくれた事務所が『F』だったのはご想像のとおりである。

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レーパーバーンで『カンパイ』3(文:坪井由美子 写真:坪井由美子、都築響一)

「ヨーロッパの歌舞伎町」ハンブルク・レーパーバーンで、酔っぱらいドイツ人相手に店を開く名物寿司屋「KAMPAI」。こころ優しき大将・榎本五郎(通称「エノさん」)のドイツ人生劇場、ついに大団円! お待たせしました!

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かなりピンボケ 05 涙のバースディ編(写真・文 比嘉健二)

ただでさえ客層の高齢化に拍車がかかり、店も客も瀕死のピンパブだが、未だにひとつだけ盛り上がるイベントがある。それがフィリピーナの誕生日を祝う「バースディイベント」なのだ。なんだ、ホステスの誕生日を祝うイベントならキャバクラだってひけをとらない、というのがごく平均的な意見だろう。このコーナーで再三語っているように、すべてが滑稽な空間であるフィリピンパブでは、残念ながら(?)それがキャバの比ではない。バースディイベントがなぜかくも特異で滑稽な空間であるかということを説明する前に、まずフィリピーナがいかに「誕生日」というものに人生のウエイトをかけているかを、解説する必要があるだろう。

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かなりピンボケ 06 ぶらりピンパブ、ローカル線の旅 中央線特急・石和温泉編(写真・文 比嘉健二)

フィリピンパブはほぼ日本全国にある。こういうと信じられないというのが、まっとうな常識人だ。ところが実際は、北海道の網走から沖縄の東大東島まで、くまなく全国に存在している。ではなぜ、多くの人間に意外だと思われるのか。ひとつには「関心がない」ため。その存在に目がいかないからだろう。ピンボケのおやじ達は普通の人間が気がつかない「その存在」を発見する、ある種の「特技」を身につける。答えは店の名前(ボラカイだとか、マニラクイーンだとか)、そしてさりげなく店の外に掲げられるフィリピンの国旗。このふたつを遥か500メートル先から察知できる、「負の能力」が身につくのだ。そしてもうひとつ、フィリピンパブの存在する地域が比較的男の歓楽街、もしくはなぜこんなとこにっていう過疎に存在しているから、そこに足を踏み込まない限りわからないのだ。

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かなりピンボケ 07 空気を読めないおやじの最後の楽園:ピンパブに生息する変なおやじ図鑑と、ピーナが好きな意外なJ-POP(写真・文 比嘉健二)

これまでピンパブ及びピーナについて散々語ってきたが、今回はそこに集う、あるいはのめりこんだ、いわゆる人生を「転がり落ちていった」客の話を紹介してみよう。これを読んだあと、多くの方が「アーよかった、自分はここまで落ちてはいないな」と再認識するはずだ。逆説的に言えば、人に勇気と希望を与えることにもなるだろう。俺は2005年の9月からピンボケ病という病にかかり、以来完治する見込みはない。もちろん、フィリピーナという強烈なウィルスに感染したわけだが、同時にそこの空間とそれを共有するウィルスにも、少なからず感染してるわけだ。俺の場合の感染ルートはやや特殊で、実は「客とその空間」のおかしさに先にやられた口だ。

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老遊女 07 熟女花びら4回転 前編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

前回の「鴬谷デッドボール」の系列店である「鴬谷おかあさん」に、今回は突撃。この店は30〜60代の熟女をウリにしたデリヘルである。地雷だらけのデッドボールとは違って、体型はスレンダーからグラマーまで、外見も美しい方が所属している。今回、インタビューをしたのは40代後半〜50代の4人の女性。“老”の冠をつけてしまうのは、いささか申しわけない、おばあちゃん世代ではなく、おかあさん世代の年齢だ。超熟女とでも呼ぶとよいのだろうか。さて、取材日当日は、東京では珍しい朝からの大雪だった。電車が止まるかもしれないというニュースが流れるなか、山手線で鴬谷に向かう。こんな天候で、果たして女性たちは出勤しているのだろうかという不安があったが、大雪の日の風俗の待機室を覗く機会なんて滅多にない。一体、どんな状況なのだろうかという好奇心もあり、約束の時間どおりに事務所を訪ねた。

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老遊女 09 寝取られ老人とスケベ老女が出演する超熟AVメーカーに行ってみた!(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

ルビーというAVメーカーがある。ご存知の方もおられるだろうが、圧倒的多数の方が知らないと思う。熟女AV女優が出演する作品を作っているメーカーで、今までの最年長AV女優は77歳とのこと。熟女というよりは、超熟女、高齢者と呼んだほうがいいような60~70代の女優も、年間約10本撮影・販売されている。50代の女優は“ざらにいる”と言ってもいいほど。ホームページを見ると、50~60代の女性たちが、ルビーから月に3人ほどデビューしているのが分かる。

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上新庄のヘルマプロディートス(写真・文 ヤマモトヨシコ)

ヤマモトヨシコさんから久々に連絡があり、「なかなか不思議な出会いがあったので、書いて送ります!」と言われて、届いたのがこれからおおくりする「大阪版・両性具有物語」である。タイトルにある「ヘルマプロディートス」とはギリシャ神話に登場する両性具有の神。もともとは美少年だったのが、水浴び中に泉の精に強姦されて、むりやり合体、両性具有者にさせられたという・・・フェリーニの『サテリコン』に出てくる両性具有の生き神もそうだし、美術作品では豊かな乳房を持った少年や、男根を持った女性などの姿でしばしば描かれてきた。さて、大阪のヘルマプロディートスは、いったいどんな生き神様なのだろうか。

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かなりピンボケ 08 なにかとお騒がせなフィリピン女性の下半身事情 元校長、ピンボケ同士としては無罪?!(文:比嘉健二 写真提供:住倉カオス、ピンボケ69)

4月のワイドショーの主役は例の神奈川の中学の元校長。1万人以上のフィリピン女性とやりまくり、しかもご丁寧にその相手との「思い出のアルバム」を年代順にファイルしていたというから、そこらへんのエロ本編集者は大いに見習うべきだろう。再就職先はミリオン出版あたりを勧めたいところだ。世間がこのニュースにかくも反応したのは、その歳が定年を迎えた60代ということ大きいだろう。日頃「死ぬまでSEX」だの「60からの回春」なんてさんざん特集している週刊誌の連中も、まさかの本物の登場にど肝を抜かれたことだろう。当然、こんなどうでもいいニュースに金をさけるのもまた大手週刊誌の強みで、「文春」「新潮」はこぞって現地まで取材に行き、元校長に斡旋したという元愛人のインタビューも掲載。何人か関係を持ったフィリピーナにも取材をしていた。ここまで熱心だったのは、自分も元校長とまでいかなくても、あわよくばと想像したに違いない。

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圏外芸能人 vol.02 ナンセンスフォークの王様は今~南雲修治という生き方~(写真・文:菅原養史)

「♪ホンジャマ ホンジャマ ・・・・ わが身に春が 訪れてから やたらと行きたい女風呂 とにかく行きたい女風呂 粋な芸者の姉さんの 背中流してあげたいの」――軽快かつ軽薄なリズムに合わせてまるで銭湯の湯船に浸かっているようなイイ~湯加減の歌詞で始まるこの歌は昭和45(1970)年、デビュー間もない無名歌手が作詞作曲歌唱をして、何かの間違いでスマッシュヒットをしてしまった。オリコンチャート初登場76位、売り上げは公称45000枚。翌年にはこの歌を元に、『いちどは行きたい女風呂』という映画が日活で作られることになる。このシンデレラボーイは当時23歳の大学1年生(!)。その頃のフォーク歌手といえばベルボトムのジーンズを履き、汚いTシャツを着て長髪姿で反戦やら愛だの恋だのをギター片手に歌うのが主流だった。そこへ突如として現れた黒縁眼鏡に角刈り頭、スラックスを履いた野暮ったい姿のこの男。歌っている内容ときたら、便所やらウンコやらバキュームカーやら女風呂やらと、スカした若者なら鼻をつまんで逃げそうな下ネタソング。三上寛や友川カズキとは一味違う、まさにアウトサイダーフォーク歌手・・・その男の名は南雲修治。かつてナンセンスフォークの帝王と呼ばれた男だ。

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BBCドキュメンタリー『アート・オブ・ジャパニーズ・ライフ』

イギリスBBCがシリーズとして放映したばかりの『The Art of Japanese Life』。有名建築家から宮大工、無印良品まで「ジャパニーズ・スタイルの良心」みたいなエピソードが満載ですが・・・その中でイロモノ・コーナーとして(笑)、僕のけっこう長いインタビューも入ってます。『TOKYO STYLE』や『着倒れ方丈記』の写真を見せながらの対話。

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かなりピンボケ 10 ピンボケグルメ(文:比嘉健二)

ご無沙汰です、単純にナマケてて原稿を書けませんでした。今回の「ちょっとピンボケ」は比嘉健二(依然ピンボケ進行中、重症)による「ピンボケグルメ」研究。いったいフィリピーナはどんなメシを食べているのか・・・誰も興味ないだろうけど。フィリピーナとメシといっても夜、フィリピンパブで働いている現役と、引退あるいは日本人のダンナとつつましく日本で暮らしている家庭持ちのフィリピーナではかなり、その食事内容が違ってくる。パブで働くフィリピーナは店から一定のノルマを課せられている。

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新連載! 肉筆――ゆきこの日々これ風俗  01 「パキる」~風俗嬢とお薬の話(文:ウズメゆきこ)

ひょんなことから知り合ったウズメゆきこさんは10代から風俗業界で働いてきて、僕が出会ったときは歌舞伎町で半裸ポールダンスをしていたけれど、いまは売れっ子泡姫。会うたびに(店でじゃないですけど)いろんなお話を聞かせてくれて、それがひとりで聞くにはもったいないくらい興味深いので、メルマガで披露していただくことにした。実話誌や夕刊紙の風俗嬢幻想でもなく、性を仕事とすることへの問題提起でもない、いまそこにあるリアリティとしての風俗。業界に生きるものだけが知る、その肉声に耳を傾けていただけますよう!

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かなりピンボケ 12 涙の俺のバースディ編(文:比嘉健二)

以前、ピンパブにおけるバースディ・イベントがいかに重要であるかを説いた。この場合のバースディとは当たり前だが、フィリピーナのことを指す。が、今回取り上げたいのは客側。つまりあの空間にボケーッとダラダラ無駄な時間を過ごしている、だらしないピンボケの客の事を指す。で、今回の客のバースディとはつまり“俺”の事である。俺は5月30日が誕生日で、今年で還暦を過ぎる事2年なのだが、2006年から毎年この夜はフィリピンパブで祝ってもらっている。別に俺はいい歳こいて誕生日など祝ってもらいたくもないのだが、これが摩訶不思議な事に、ちょっとでも仲良くなったフィリピーナ達はさりげなく話した客の誕生日をしっかり覚えているのだ。まぁ、それだけかの国の人達は本当に誕生日というものが重要ということなのだ。

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ティーンズロード回想録  よろしく流星 第2回 自信満々の創刊号だが・・・日本全国のヤンキーを追い求めて約5年。俺が見た、面白くて、ちょっぴり恐かったあの秘蔵話を大公開!(文:比嘉健二)

「止めときなよ、暴走族雑誌なんてさ、面倒くさいだけで、生意気な奴らをおたく扱える?」その男は応接間のソファに足を投げ出し、右手に持ったタバコは自分の頭上近くまで高々と上がっている。神経質なのか、しきりにタバコの灰を落としている。それは明らかにこっちを牽制している態度に見えた。同時にその目はまるでサメのように冷徹に俺を品定めしている。俺が今まで会ってきたどんな人物よりも威圧感がある。身体がデカイとか喧嘩が強そうだとか、そういう単純な迫力ではなく、何か、自分の心の奥底を鷲掴みにしてくるような洞察力の鋭さを感じた。この人の前では多分おべんちゃらとか通じないだろう。

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ティーンズロード回想録 よろしく流星 第3回 史上最強レディース 三河遠州女番連合(通称・女連)参上! 前編 [文:比嘉健二(ティーンズロード初代編集長)]

豊橋駅前が女連72人で埋め尽くされた!――それは一本の電話から始まった。ティーンズ編集部は出勤とほぼ同時に、全国の読者や取材依頼のヤンキー連中からの電話がひっきりなしに鳴る。中には父兄や学校関係者からのクレームも少なからずあることはあるが、そういう対応にも次第に慣れてきていた。その一本の電話を取ったのは編集部最年少の今井だった。「編集長、内容がよく聞き取れないんですが、なんか文句があるみたいで、あと、ちょっとラリってるようです」シンナーを吸いながら読者やヤンキーからの電話は日に数回あるが、今井の態度を見ると、俺が対応したほうが早そうだったので電話を代わった。女性だったが、その声はあきらかに少女の声ではない。多分、OBだろう。確かにシンナー特有のラリリ方と、早口な名古屋弁があいまって、先方が何を言いたいのか理解するのに数分を要した。ティーンズに出ているレディースはみなハンパばかりだ、うちのチームはハンパじゃない、比較にならないので取材に来て欲しい。要約するとこういうことで、よくあるといえばよくある話。みな、自分たちのチームがナンバー1だと自負してる自己顕示欲の塊みたいな連中なのだから。「で、そちらは何人ぐらい集まりそうですか? え、ひ、100人以上・・・ですか。本当に?」

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ティーンズロード回想録 よろしく流星 第5回 世間で叩かれ悪書指定に [文:比嘉健二(ティーンズロード初代編集長)]

青森でティーンズロード絡みのリンチ事件が――1991年ティーンズロードは大ブレイクした。90年の7月に月刊創刊され、前回でも紹介した三河遠州女番長連合の反響等もあり、出せば実売は平均90%ぐらいの勢いだった(特筆すべきは実はコンビニにはほとんど入っていなかったのだ。理由はこういう奴らがコンビニにタムロすると迷惑だからと不扱いに指定されていた)。部数も17万部ぐらいに膨らみ、世間でも一般的にも認知されてきた。この一般にも浸透したことが思わぬ事件を産んでしまった。1991年の夏休み明けぐらいだっただろうか、一本の電話が編集部にかかってきた。この日はたまたま俺しか編集部にいなかったので、すぐに受話器を取った。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 07 ヤッてみないとわからないmessy桃源郷(文:ウズメゆきこ)

久しぶりの「肉筆」は、先週号でも告知したメッシー写真家ラマスキーさんとのセッション体験談! 若くしていろんな体験を積んでる(積みすぎてる?)ウズメちゃんですが、全身真っ黒になって、いったいどんな境地に達したのでしょうか。

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新連載! 西成ガギグゲゴ「七人の侍」1 番頭さん(写真・文:くまがいはるき)

ピカスペースの店長である気仙沼はるき(くまがいはるき)さんが、「店を切り盛りしながら、すごくおもしろい文章を書いてるから」と推薦してくれたのがケイタタさん。ピカスペースに出没する特濃常連客たちを描いた文章を読ませてもらったら、なるほどすごくおもしろい! これから数回にわたって、くまがいはるきさんによる『西成ガギグゲゴ』をお送りする。不思議なタイトルの由来はのちに明かされるかもしれないけれど、かつてウェブ上で発表したコレクションに、大幅に加筆していただくことになった。新世界や西成の人間模様をおもしろおかしく描いたものはいくらでもあるけれど、こんなふうに生活に寄り添った記録はなかなか読めないはず。日本でもたぶんあの場所でしか味わえない、甘く饐えた発酵臭に酔っていただけたらうれしい!

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」2 伍(写真・文:くまがいはるき)

だいたい日曜日の昼ぐらいに 彼は、訪れる 四等身程のビジュアルで、まったく歯が無い ニカ―と笑うと、何とも言えない表情になる 「今日も持ってきましたよ」だいたいがこの入りである ドン・キホーテで買った、格安の卵をその場で料理しだす 特製のたまご焼きを作ってくれる ダブルソフトのパンも買ってきて、サンドにして その場に居合わせた人達に振る舞う 「はるきさん、いかがですか?」 美味しい 本当に美味しい まったく歯が無い彼の名は、伍 毎回、たまご焼きをつくりに来る たまに、ポテトサラダを大量に仕込み持って来てくれる

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SNSの神々 第3回「パチンコ屋さん」を愛した女(文:吉村智樹)

SNSを通じて自己表現をしたり、収集や観察の成果を発表したり。そうして熱い支持を集めるカリスマたちに迫る「SNSの神々」。第3回目は、ある「人気ハッシュタグ」に迫ってみたい。SNSを有意義に利用するために、「#」(ハッシュタグ)は欠かすことができないラベルだ。ハッシュタグはFacebook、Instagram、Twitterなど各種SNSをまたにかけて使え、そのため「Googleよりも検索に便利だ」とまで言われている。路上観察やロードサイド物件にも、多くのハッシュタグが存在する。「#廃墟」「#いろんな協会」「#標しくぃ」「#路上園芸」「#スナック団体戦」「#電気風呂」「#ロマンチック美容室」「#よき電話マーク」「#日本給水党」などなど、さまざまなストリートハンティング系のハッシュタグが林立し、稼働している。

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ラブドール誘拐事件

SNSで拡散したばかりか、スポーツ新聞でも取り上げられたりしたので、すでにご存じのかたもいらっしゃるだろう。本メルマガでもおなじみの、異端のラブドール愛好家・兵頭喜貴が岩手山中で作品撮影中にドールと付属品などを盗まれたものの、執念の探索で窃盗犯を特定。犯人を相手取った損害賠償訴訟を提起し、このほど完全勝訴を勝ち取ったという顛末である。埼玉・越谷簡易裁判所で判決が言い渡されたのが7月24日のこと。その直前に兵頭館長から詳しい事情を聞いていたが、自宅を開放する「八潮秘宝館・秋の一般公開」がアナウンスされたので、取材から少し時間が経ってしまったけれど、ここでまとめておきたい。

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SNSの神々 第4回 「走るアート」の男(文:吉村智樹)

SNSを通じて自己表現をしたり、収集や観察の成果を発表したり。そうして熱い支持を集めるカリスマたちに迫る「SNSの神々」。第4回目は、Facebookに、とてつもなく大きな作品を発表し続けている、ひとりの肉体派表現者を紹介したい。友人のライター仲谷暢之くんから、「Facebookに、途方もなく大きな作品を発表し続けている小学校の先生がいます」と教えられたのが今年の1月。仲谷くんが保存していた「小学校の先生が描いた作品」をメールで送ってもらった。そこにあったのは、ネット地図上の道路をうまくつないで描いた、大きな文字や絵。

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」3 えるびす(写真・文:くまがいはるき)

5年ぐらいになるだろうか 意外と上品で、ムードと世界観をもった男が常連になった 出会いを覚えている 男は、かなり泥酔した状態で、軒先を覗いていた 確か、音楽のイベントで音合わせをしている最中だった 「お金無いんだけど、聞いてていい?」 と聞かれたので、中にどうぞと促した 男は、ニコニコしながら聞いていた しばらくして 「エルヴィス・プレスリー弾ける?」 男は、唐突に聞いてきた 演者のひとりがエルヴィス・プレスリーを奏で出した途端 男は立ち上がり全身を躍動させながら歌いだした あまりのパフォーマンスに演者一同も圧倒されて、その後 しばらくの間、男の即興LIVEが続いていった 素晴らしいパフォーマンスだったので酒を一杯ごちそうした 男は「Happy Night!」と言い残し消えた その男こそが、のちのピカスペース七人の侍のひとり【えるびす】である

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 2

上海市中心部をほぼ南北に流れる黄浦江を渡った対岸、昔は繊維関係の工場や倉庫が集まっていたエリアに、若い姉妹が住んでいた。1995年に建てられたという典型的な団地スタイルの2DKで、広さは55平米ほど。地下鉄の駅が徒歩10分ほど離れているのと(でもバス停は団地入口の真ん前)、エレベーターなしの6階という難点もあって、家賃は月に4,300元(約66,000円)と、かなり好条件。それまで高層マンションに住んでいたのを、ネットで見つけて即決、この1月に引っ越してきた。ほとんど家具がなかったので、テーブルや本棚などを少し買い足さなくてはならなかったのも、安さの理由かもしれないとのこと(ベッドだけは2部屋ともついていて、「でも妹のベッドのほうが大きいのよね~」と姉の愚痴)。

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」5 回路屋(写真・文:くまがいはるき)

七人の侍のひとり、回路屋が店に来たのは4年ほど前だったと思う 私は電子機器が壊れると、捨てる前に中身を開いて構造や部品を取り出してみる 修理に挑戦して、直る場合もまれにある 電子機器を開いて取り出している時に、回路屋が来て手伝ってくれた 何度か忙しい時にかぎって出入りしている人物だった 軍帽をかぶって独り言が多かった ノイズ感が溢れていた あまり深入りしないでおこう そんな印象だった 話したのは初めてだった 「なにをバラしてるんですか?」 そう言いながら店に入って来た 古い蛍光灯が中に詰まった代物だった

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 10

上海市中心部の北東に位置する虹口区。第二次大戦中は日本の租界があって、「小東京」と呼ばれていたという。上海人の憩いの場である魯迅公園、その一角にはサッカー場の上海虹口足球場があり、1部リーグに所属する上海申花(シャンハイシェンホァ)のホームスタジアムでもある。巨大なスタジアムを見おろすように建つ高層ビルの18階、こんな場所にと驚くロケーションに、彼女は友人とふたりでヘアメイク/タトゥー・スタジオを開いている。

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」7 はん (写真・文:くまがいはるき)

幼稚園の時、昼飯は給食だった お箸とおしぼりを各児童が準備して給食を食べていた 今は大好物なのだが、片栗粉で揚げられた唐揚げが当時は食べれなかった 唐揚げが給食に出るたびに、おしぼりが入っているプラスチックケースの奥に唐揚げを押し込んで隠していた その唐揚げが、その後どうなったかの記憶が無い あれは、夜の新世界市場だった 縦にまっすぐ伸びる暗がり世界の中から、おっぽりだされたように彼は、私の前に唐突に現れた 頭の上にニット帽をのせた、どこか道化のような風貌だったが、強烈に死臭を放つ浅黒さがそこにあった 8年前にわたしは新世界市場に来たのだが、それから数日後に彼は新世界市場に来て、私と出会った 名は「はん」北海道苫小牧から、ここまで流れてきたみたいだ

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タキシード・サムライ 1

三好三郎さんが亡くなった。5月11日、93歳のまさしく大往生だった。いまから2年近く前だろうか、珍しい依頼を受けた。旧知のレストラン・チェーン経営者・三好玲子さんから声をかけてもらって、父の三好三郎さんの一代記を聞き書きでまとめることになったのだった。最初はどこかの出版社に話を持ちかけようと思ったが、「お世話になったかたたちに配れればいい」ということで、非売品の私家版で制作することに。「お金はかかってもいいから、ほかにないようなものをつくってほしい!」という、ここ数十年聞いたことのないリクエストをご本人からいただき、『捨てられないTシャツ』のデザインをしてくれた渋井史生くんを誘った。逗子のご自宅に1年ほど聞き書きに通い、去年の3月末に『タキシード・サムライ 三好三郎一代記』という、1,000部限定の本を仕上げることができた。こんな仕事はたぶん最初で最後、もう二度とできないだろう。

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蒲田リハビリ日記 第2回  場末のマンション整体院をめぐる心の旅 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「人間は最終的に他人との信頼関係とか、感謝とか、そういう心のつながりを求めてしまうよね。他人をだましてカネを稼いでも、得るものはなにもない。歳をとって、ようやくわかった。遅いけど……」とYさん(現在65歳)は語る。 蒲田には指圧マッサージや中国整体などを含む整体院が数多く存在する。昨今どこの街にも多いが、蒲田には特に多い。マンション整体院も多々ある。15年ほど前、俺は仕事でこの街を何回か訪れている。マンション整体院とは業界内の隠語だが、それはいったいどんなものだろうか。

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蒲田リハビリ日記 第3回  殺風景の向こう側に見えた景色  検査入院とおじいさんのキネマ通り商店街 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

生まれ育った団地の屋上から見えたのは、中京工業地帯の無機質な工場群が建ち並ぶ灰色の風景だった。下請け町工場の金属を切削する非楽音が耳をつんざく。光化学スモッグを形成する微粒子が時折鈍く光っては弾け飛び、風景のなかへ溶けていった。微粒子が弾け飛ぶたび、下手くそな自作マンガの登場人物たちが勝手に動き出すことが度々あった。 俺(現在51歳)は6年前に脳梗塞を患って以降、今日まで再発や検査(年2回)などで計11回入退院を繰り返している。蒲田へ移り住んでから、ずっと同じ病院へ通っているが、その病院には9割以上、近所の患者しかいない。

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蒲田リハビリ日記 第4回  医療リハビリテーションと認可外ゴミ回収の基礎知識  再発入院と多摩川大花火、そしてホームレス小脱走 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

脳梗塞を患って病院近くの蒲田へ移り住み、初めてその音を聴いた。毎週決まった曜日(資源ゴミ回収日)の早朝、ホームレスたちが自転車やリヤカーを走らせ、競うように空き缶を拾い集めてゆく。その際に生じるアルミ缶のこすれ合う音、その音のことだ。 正規の廃品回収業者がやってくる前にアルミ缶のみを回収し、はやてのように去ってゆくホームレスたち。ゴミ捨て場を散らかすためか苦情もあるようだが、大田区(蒲田周辺だけか?)がそれを許しているのは、資源ゴミが彼らの生活の糧だと知っているからだろう。大目に見ているのだ。

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シブメグの人生小劇場 03 ヌノちゃん (文:シブヤメグミ)

いま、シネマート新宿で10月8日まで『UNDERDOCS』というタイトルの特集上映が開催されている。公式サイトのイントロダクションに、 メジャーで大衆的な音楽映画が劇場で注目を集める中、シネマート新宿が放つ真逆の新企画、まだ日本で紹介されていない新作、長年上映されていない旧作など、地下にうごめく数々の<アンダーグラウンドなロック・ドキュメンタリー映画>にスポットライトをあてる期間限定の特集上映「UNDERDOCS」(アンダードックス)。 こう書いてあるとおり、まったく陽の目を見ていないと言っても過言ではない作品ばかりが並んでる。タイトルを見ても、普通は知らないなあってものばかりだろう。それでもどうしても、目撃すれば初期衝動にスイッチが入り、いつかのあの頃が、さっきの瞬間となって立ち上がる。そんな作品で溢れている。

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蒲田リハビリ日記 第6回  移住失敗 多摩川河口の猫と名もなき小さなユスリカ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

蒲田へ引っ越し、今年11月で丸6年になる。もう6年になるのかと思う一方、まだ6年しか経っていないのかと思うこともある。脳梗塞を患って俺の生活は一変したが、6年前に考えていたことと、6年後のいま考えていることには大きなへだたりがある。病院近くの蒲田へ連れてこられ、いま俺は本当によかったと運命に感謝しているのだから。 だが6年前は、そんなこと露ほども思っていなかった。その3年前、三浦半島の片田舎へ移住した俺は、平日の昼間から近隣を散策し、特にいいことはなかったが、それなりに日々を謳歌していた。18歳で上京し、24年8カ月間東京で暮らしてきたものの、根が田舎者ゆえ人混みや満員電車に耐えられなくなり、42歳にして移住を決断したのだった。

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シブメグの人生小劇場 05  瀬谷とマイルスと私 (写真・文:シブヤメグミ)

こないだ実家へ荷物を取りにちらっと帰った。最寄駅は海老名。いま私は新宿に住んでいるから、小田急線で1時間の里帰り。荷物まとめてすぐに帰った。実家滞在は10分。仕事に出てる母親にも会わなかった。 海老名駅に着いて、来た時とおんなじように小田急線で新宿に戻ろうと思ったけど、時間があったから久しぶりに相鉄線に乗ることにした。実家にいる頃、いちばん利用していた電車。いまでも駅の名前を全部誦じることが出来る、たったひとつの鉄道会社。 その中でも一生忘れられない駅が瀬谷駅。改札口を通って駅の外に出たことは一度もないけど、私にとって、とても大切な駅。

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蒲田リハビリ日記 第10回  蒲田発!! 世界屠音紀行 ノイズアーティスト GOVERNMENT ALPHA 吉田恭淑――「好きなことを全うするしか、自分の人生に満足する道は開けないと思っているから」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

吉田恭淑(51歳)は、俺の高校の同級生である。彼はノイズアーティストとして世界的に評価され、音響のみならず美術の領域にまで足を踏み入れている。自由奔放な彼のセンスや発想力、やりたい放題の悪ふざけをすべて受け入れてくれるのが、ノイズアートという現代芸術の世界なのだ。彼の生き様は魅力に満ちあふれていると、20代のころから強く思っていた。好きなことに身も心も捧げる人生、彼ほど幸せな男を俺は知らない。2020年11月14日(土曜日)、女性と暮らす都内の自宅マンションを訪ね、話を聞かせてもらうことになった。ところどころ郷土の方言が飛び交う和やかな雰囲気のなか、あらためてノイズアートの奥深さを知る貴重なインタビューとなった。

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シブメグの人生小劇場 08 Oh!ヨーコ (写真・文:シブヤメグミ)

2月18日のDOMMUNEは、私にとって大切なDOMMUNEだった。 タイトルは『音楽の現場、もう限界です』。 その日、付けられたメインのハッシュタグは、 #WeNeedCulture #失くすわけにはいかない #SaveOurPlace #音楽の現場 この4つ。 他にもこの1年間に生まれたハッシュタグがたくさん付けられていた。どれも振り絞った叫びであったり、暗闇の中、絶望という針の穴に希望という糸を通すような気持ちが込められていた。

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蒲田リハビリ日記 第12回  デリヘル現地調査Tour JR南武沿線(神奈川県川崎市内分)紀行 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「南武線の矢野口駅から川崎駅まで、そうだな6日間くらいかけて一緒に歩こうか」と提案してくれたのは、「第8回」にも登場したゴーストライターSさん(56歳)だった。南武沿線に職場(デリヘル)があるため、「マーケティング調査というほど大それたものじゃないけど、川崎市全域を事細かに観てまわりたい」と俺がいうと、街歩きをライフワークとするSさんがこう乗ってきたのだ。Sさんの自宅は、南武線と京王相模原線が交差する稲田堤駅周辺にある。そのひとつ先の矢野口駅から川崎駅まで散歩すれば、「南北に広がる川崎市を、ほぼ全域捉えることができる」とSさんは嬉しそうに付け加えた。Sさんは顔が小さいため、巨大なマスクを装着していると誰だかわからないほどだ。 数日前、川崎市内で手広くデリヘルを経営するB社長(64歳)から、実はこう誘われていた。「副店長として新店舗を開発してみないか?」と。「コロナ禍だけど、人間に性欲がある以上、性風俗産業が滅びることはないから」とB社長は滑舌美しく語った。入ってまだ1カ月半だったが、この種の職業では抜擢が速い。そのことは整体業界で慣れていた。中学生程度の日本語が話せれば誰でも役に立てるのが、この種の職業の特長だといえよう。まだ他のスタッフには内密だったが、コロナの影響で、すでに3店舗の閉鎖が決まっていた。そのうち1店舗を解約せずに残し、なにか付加価値を乗せて新店舗(デリヘル)を始める予定だったのだ。

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シブメグの人生小劇場 09  2021年の、4月と5月のあいだの夜に (写真・文:シブヤメグミ)

メグさん俺ね、ホスト辞めんの。 あの店さ、閉めるんだって。 こないだオーナーが来てね、朝礼で言われた。グループの中でうちの店は売上よくなかったからさー、切られちゃった。 でもうち、リピートする姫が多かったんよ? 小さい店舗で天井も低かったから、シャンデリアもないのに。照明暗くしてんじゃん? だからぶっちゃけ、壁やソファーとかハゲてきてるとこはさ、マジックで塗ってごまかしてるような店だったのにだよ?  それでもね、また来てくれてたの。姫たち。みんな、本当に文字通り身体張って稼いだお金握りしめて。俺のこと初めて指名してくれた姫はね、俺の初めての生誕でシャンパンタワーもやってくれたんだけど、そん時タワー見て泣いちゃってさー、それ見たら俺も泣いちゃって。 「ここで遊ぶために頑張ってたら、私、いつの間にかナンバーワンの嬢になってたよ~」 つって。

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蒲田リハビリ日記 第13回 田園調布に家がない! (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

大田区田園調布は世田谷区成城とならぶ東京・最上層の高級住宅街だが、昨今どういうわけか異変が起きている。更地や空き家が、そこかしこに増え続けているのだ。住民の多くは経営者や著名人、もしくはそのご子息だが、不況とコロナのダブルショックで、それぞれの事業が立ちゆかなくなってしまったのだろうか。 最上層と最下層でありながら、田園調布と蒲田は同じく東京都大田区に属し、東急東横(・目黒)線と多摩川線を乗り継ぐものの、わずか15分程度の近距離にある。以前は東急目蒲線が直通運行しており、移動時間はもっと短かった。2000年8月に行われた東急線の路線再編により、目蒲線は目黒線と多摩川線に分割されたのだ。

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蒲田リハビリ日記 第14回 ルポ・デリヘル―最終章 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

リーサル・ウエポン金本(現在52歳)とは25年前、本名のほか、もうひとつ名前が必要になり、ジャンクカルチャー雑誌『GON!』の入稿間際に慌てて名付けたペンネームである。金本というのは小学生のころ、いつも一緒に遊んでいた年上の友人ふたりがともに在日韓国人で、それぞれ日本名を「金田」「金石」(本名はどちらも「金=キム」)と名乗っていたことに端を発する。もっとふたりと仲良くなれるよう、「じゃ俺、金本!」と口走ったのが金本の始まりだった。リーサル・ウエポンとは最終兵器という意味だが、なぜそんな呼称を掲げたのか、四半世紀たったいまでも、よくわかっていない。

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シブメグの人生小劇場 12  青春の『ドグラマグラ』 (写真・文:シブヤメグミ)

中学の同級生に、ドを付けたくなるヤンキー・サカイくんがいた。 ある日授業をサボったサカイくんは、技術科のミウラ先生の通勤バイクをいじってブンブンブンとエンジンを吹かし、全校生徒が窓から見守る中、校庭をブンブンブンと走り回った。見かねた教務主任が自分の車で追いかけてバイクを止めた。その日、私たち他の同学年の生徒は一日中自習。サカイくんはその間、ずっと叱られていた。最後に何か言うことあるだろ!言ってみろ!と、教務主任が怒鳴ったら、 「そのへんのバイクでやるよりもいいっしょ? それに俺、ミウラ先生のあのバイク乗ってみたかったんだよねー、すげーカッコいいからさー。ほんと、気持ちよかったです!」

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シブメグの人生小劇場 15  ハッピーバースデー (文:シブヤメグミ)

「リコねえ、2回しかお着替えしなかったんだよ!」 この11月の連休明け、おんなじマンションに住んでるちびっ子のリコちゃんが、エントランスに響く大きな声で私に自慢した。 「初めてひとりでばあばのところにお泊まりしたんだよ! 楽しかった!」 おばあちゃん家に4日間お泊まりしてたのに、お着替え2回だけだったの? 「そうなのー、これ着てお出かけしようねーってばあばと言ってたのになーんにも着なかったの!」

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シブメグの人生小劇場 15  ラララ (文:シブヤメグミ)

生まれて初めて観た渋さ知らズはただのアングラだった。 白塗りのつるっパゲがう~あ~とか言いながら客席に飛び込んだり、 ワケのワカラン主張を殴り書いた旗を掲げたり、 乱入した酔っ払いなのか、 それとも最初からステージにいたミュージシャンなのかさっぱりわからない人々が、突然マイクを奪い合って喚き散らしたり。 なんかもうとにかく音楽が身体や心に残らずに、 おまけのような存在ばかりが「疲労感」という形で残っていた。 特に最悪だったのは、いまから30年前の本牧ジャズ祭のライブ。

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シブメグの人生小劇場 16  戦争に反対する唯一の手段は (文:シブヤメグミ)

2022年2月24日、ロシアが戦争を始めた。 それを知った時、私は空腹だった。 いつも歩く新宿三丁目がなんだか奇跡のように感じる。伊勢丹、無印良品、ディスクユニオン、紀伊国屋書店、中華料理達磨、ティファニー、つな八、西武、らんぶる……。ぐるぐる歩いてた。空腹なのに。 そんな私の目の前に、大好きで大切なお店があった。 食堂長野屋。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 09 うずめあやかのAVデビュー! (文:ウズメゆきこ)

お久しぶりです。ありがたいことに風俗は繁忙期で忙しく、原稿を書いている暇がなかったです。みなさんお元気ですか? ついにうずめゆきこ改めてうずめあやかとしてSODからAVデビューすることになりました。風俗ではデリヘル、M性感、ホテヘル、ソープランドなどなど様々な業種を渡り歩いて参りましたが、性産業で唯一やったことのない業種がAVでした。令和のAV女優として花開きたいと思って出演を決心しました。 今回はデビューまでの道のり、撮影現場の裏事情について語っていけたらなと思いますので、どうか皆さんお付き合い下さい。

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新宿区立総合天然宙屯地 5 最終回  埴輪のじいさんに弟子入りする (画・写真・文:小指)

そういえば私は一度だけ、埴輪のじいさんのところへ弟子入りを考えたことがあった。このままバイト生活を続けていても将来になんの展望もないことに悲観し、いつにもまして精神的にどん詰まっていた時期だったように思う。  周りの知人は結婚して子供を産んだり、仕事もそれなりの立場になっているというのに、私は将来の糧にもならない仕事で日銭を稼ぎながらじいさんたちと悠長に暮らしている。本来の目的である画家の夢も、無計画に掛け持ちしたバイトで絵を描く時間すらなく完全に本末転倒になっていた。今更ながら、私は「自分の今の状況は相当やばいんではないか」と焦りだしたのだった。

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シブメグの人生小劇場 21  懺悔の値打ちもない 第1章 私・メグミ (文:シブヤメグミ)

毎回、人生の光と影が織りなす物語で僕らを心地よく動揺させてくれるシブヤメグミさん。今回は連載始まって以来の大作! 怪人としか言いようのない、ひとりの男をめぐる5人のモノローグをこれから5週にわたって連続で読んでいただく。「小説より奇なり」どころか、こんなことがあっていいのかと信じがたい、しかしすべて実話による愛欲の大河ドラマ。こころして、11月末のゴールまでお付き合いいただきたい。

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シブメグの人生小劇場 24  懺悔の値打ちもない 第4章 調理師・アサコ (文:シブヤメグミ)

カーテンは3日おきに洗ってた 窓は1日おきに拭いてた 掃除機の音が大嫌いなひとだったから、 職人さんが手造りしたシュロ箒で掃除してた お布団は乾燥機でいつもふかふかにして、 枕カバーは毎日取り替えてた 湯呑み茶碗に茶渋が付かないように毎日漂白してた お気に入りのお漬物と お気に入りの海苔を切らさないようにいつも気にしてた お米は研ぎ汁が透明になるまで研いでた お味噌汁と玉子焼きに湯気が立っていないと怒られた でもいま、なにひとつしてないの 理事長が死んだから

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シブメグの人生小劇場 25  懺悔の値打ちもない 第5章(終章) 俺・トオル (文:シブヤメグミ)

俺が覚えてるいちばん古い記憶は、フィンガー5に会った時のことだね。 小学生になったばっかりだったと思う。 ドサ回りであのへんに来たんだよね。 俺、フィンガー5が大好きでいっつもモノマネして歌ってたんだよ。 誰のコネ使ったのか知らないけど、親父とコンサート行った後、楽屋に通されてさ。他にもそんな親子連れがたくさんいたなー。一生懸命書いたファンレター渡して、なんか私物にサインしてもらって、写真撮って握手して。メンバー全員、この流れ作業を死んだ目でこなしていたよ。いま思えば、あんな大変な仕事を自分とたいして変わらない年齢の子供がやってたなんて考えられないよ。ほんとに凄いよね。

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シブメグの人生小劇場 27  『スーパー・レクイエム』 (文:シブヤメグミ)

私は熱心な坂本龍一のファンではない。 よく言うYMO信者でもない。 報道で『ライディーン』が代表曲のように流れたことに怒ってる人たちを見て、そこで初めて高橋幸宏が作曲したのを知ったくらい、なんにも知らない。 こんなに音楽が好きなのになんで?って自分でも思う。 しかし、少し考えて出てくる理由は悲しいくらいくだらない。 子供の頃からひねくれていた私。 流行りものになんて見向きもしなかった。 しょんべん臭い他のガキと私は違うの!と言わんばかりに、逆張りに次ぐ逆張り。

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シブメグの人生小劇場 33  バイバイ、スモーキン・ビリー (写真・文:シブヤメグミ)

確か小学5年生だった。 音楽の時間。 リコーダーの課題曲『スカボロー・フェア』を練習してた。 サイモンとガーファンクルのこの曲が好きだったから、丁寧に練習していた。 それなのに、私は指遣いを間違えて素っ頓狂な音を出してしまった。 近くの席に座ってた男子が爆笑した。 間違えた指遣いを真似してきた。 それが伝染してって、「教室のみんな」って感じちゃうくらいの笑い声の渦が生まれた。 それからしばらくの間、リコーダー吹けなくなっちゃったんだよなあ。 吹くタイミングになると、その時の間違えた指遣いをみんなが笑いながら真似して見せつけてきたりして。 いつも鼻の奥がツーンってしちゃって、吹けなくなっちゃって。 だから授業ではいつも吹いてるふりしてた。 『スカボロー・フェア』、あんなに好きだったのに。

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老遊女 02 3億円の宝くじ当選を夢見る、恋する老遊女 前編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

「ちょっと、この話、聞いてもらえます? ペナルティが20万円、発生しちゃったんですよ……」前回の記事を書くにあたって、最年長AV女優の黒崎さんにインタビューを申し込んだ。その際、プロダクションのマネージャーから、ある女性をインタビューしてくれないかと逆にお願いをされた。その女性は沢村みきさん。昭和23年生まれ、65歳の女性である。沢村さんに、とあるAVメーカーから仕事の依頼が入ったのだが、撮影日の当日、現場に向かう途中の道端で具合が悪くなって、沢村さんが倒れてしまったのだという。

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ハダカのこころ、ハダカの眼 05 踊り子という選択(写真・文 牧瀬茜)

ストリップとは何ぞや……。戦後、額縁ショーから始まった日本のストリップは、時代の流れの中で多様化し、変容してきました。時代の流れとはいっても需要だけがストリップの変遷を決めてきたわけではなく、そこには常に警察とストリップ屋とのいたちごっこが絡んでいたそうです。法の目を掻い潜りながら行きつくところまで行きつき、後を追かけるように張り巡らされてきた規制の網の中で窒息しそうになりながらも生き抜いてきた過程そのものが日本のストリップ文化なのかもしれません。

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日展という魔界

やっぱりいまだに泰西名画が強いんだな〜、としみじみ思うが、そういうなかでいまだに別格、最強クラス、しかし現代美術ファンにも、欧米古典美術ファンにもほとんど見向きもされない「日本最大の公募美術展」がある——そう、日展だ。去年10月30日に朝日新聞がスクープした、書道部門での入選事前配分という不正行為に端を発した日展スキャンダル報道を、興味深く読んだかたもいるだろう。一般的にはほとんど話題に上ることのない、過去の遺物的な印象しかない展覧会が、いまだにそれほど力を持っていたというか、パワーゲームの舞台になっていたことに、驚いたひとも多いのではないか。

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老遊女 06 デッドボールで没収試合! 後編(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

『地雷! レベルの低さ日本一』がキャッチコピーの風俗店、『デッドボール』の後編、いきます! ちなみに地雷とは、前回説明したが、ここでもう一度おさらい。デブ、ブス、ババアという、当たったら痛い風俗嬢のこと。そもそもは、写真の加工技術が進化してパネマジ(パネルマジック)全盛の昨今、風俗嬢は実際に会ってみないと、本物の容姿がどの程度なのか分からなくなっている。そのため、「やってきたら爆弾女だった…」なんてことはざら。実際にプレイがスタートしたら、性格の問題で満足できないというレベルではなく、苦痛な時間を味わされたという残念なときもある。そんな容姿や性格が地獄な女性のことを、ネットや風俗愛好家たちの間では地雷と呼んでいるのである。さて、そんな痛い風俗嬢ばかりのデッドボール…。インタビューを受けてくれたのは、オビスポさん、65歳である。名前の由来は巨人と日本ハムに在籍していたウィルフィン・オビスポ選手である。

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老遊女 08 熟女花びら4回転 後編 〜嘘つき女と出稼ぎ母さん〜 (文:中山美里 写真:谷口雅彦)

先日、私自身がインタビューを受けたことがあった。それは風俗嬢に関するものだったのだが、「風俗やAV女優など今まで何人ぐらいのインタビューをしたことがあるか?」と問われ、改めて過去を振り返ってみた。今月(2015年2月)だけでデリヘル嬢3人、職業愛人2名、AV女優1名、SM嬢1人、風俗経営者3名と合計10人に話を聞いている(ちなみにこの老遊女のインタビューは先月行った)。少ない月でも3人にはなる。おそらく少な目に見積もっても月平均5〜6人になるのではないだろうか。そうやって計算すると、750〜900人くらいになる。「同じ人から何度も話を聞くこともあるので延べ人数になってしまうが、アダルト系の取材をするようになって12年半くらいになるから、計算上だと1000人弱になりますね」そう答えてみて、自分でも「そんなに話を聞いてきたのか」と驚いてしまった。

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老遊女 10 8本のAVに出た76歳のナンパ師、ジゴロRYU氏を家庭訪問!(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

AVという世界。素人といっても企画女優が出ていることもあるし、どこまでが本当でどこまでがフィクションなのかは分からない。だが、私が知る限りこのRYU氏、「RUBY」の「ジゴロRYU氏の秘蔵映像コレクション」シリーズにしか出演していない。(中略)前回「RUBY」の制作スタッフにインタビューをした際、「ジゴロRYU氏に話を聞いてみたい」とお願いしたところ、「今はもう撮っていないんですよね。バクシーシ山下さんが連絡先を知っているので、聞いてみて下さい」とのことだった。

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かなりピンボケ 09 ピンパブを舞台にした映画が1週間限定、新宿で上映――ごく一部のピンマニアから注目された映画『ピン中』を「ピン中」が語る!(文:比嘉健二 [ピン中12年])

久しくこの連載をさぼっている間に、とんでもなく間抜けな映画が上映された。『ピン中』という題名からして、もう何を言わんとしているかはおわかりだろう。この連載のタイトルは「かなりピンボケ」。「中」か「ボケ」の違いはあるが、いずれにせよ、フィリピンパブ及びフィリピーナにものの見事に「感染」した特異な病を持つ、どうしようもなくグータラな男達のことを指す。で、いったいこの映画を俺のような同好の士から観たら、どんな映画評になるのかというところを書いてみよう。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 02 フードルという女神たち(文:ウズメゆきこ)

いまから15年ほど前にフードルが誕生した。文字どおり風俗業界のアイドルである。元祖フードルと言われたのが「可愛手翔(かわいでしょう)」。人気が頂点に達したころは、在籍していた風俗店で彼女目当てのお客たちが連日、開店前から長蛇の列をつくったほど。現役風俗嬢の私としては羨ましいかぎりである。可愛手翔の人気はテレビ業界にまで波及、『ボキャブラ天国』にも出演して脚光を浴びた。彼女以外でも、当時のフードルにはCDを出した子もいたそうだし、風俗情報誌『ナイタイ』は日本一のフードルを決める!というスローガンで「ミスシンデレラコンテスト」を毎年開催していた。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 04 私のソープ・デビュー(文:ウズメゆきこ)

援助交際などの個人売春、違法売春ではない、合法的なお店に勤めた初めての風俗仕事はデリバリーヘルスだった。当時はまだ10代、苦学生キャラを演じてはそこそこ良いギャランティを稼いでいた。それから20~21歳あたりで稼げない時期が来てしまった。理由は「太ってしまったこと」と、「学生というブランドが通用しない年齢」になったこと。かつての自分と似たような能書きの10代がどんどん入店してきて、ついに店長からクビを言い渡された。そのあとは太ってしまったがゆえに、激安ヘルス店やSMクラブを渡り歩くことになった。

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両性具有者の恋・大阪編

2015年4月22日号で神戸のアーティスト/ギャラリー・オーナー、ヤマモトヨシコさんが『上新庄のヘルマプロディートス』という奇妙でおかしい大阪スタイルの「両性具有物語」を寄稿してくれた。タイトルにある「ヘルマプロディートス」とはギリシャ神話に登場する両性具有の神。もともとは美少年だったのが、水浴び中に泉の精に強姦されて、むりやり合体、両性具有者にさせられたという・・・フェリーニの『サテリコン』に出てくる両性具有の生き神もそうだし、美術作品では豊かな乳房を持った少年や、男根を持った女性などの姿でしばしば描かれてきた。

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新連載! ティーンズロード回想録 よろしく流星 第1回 伝説のレディースにムチャクチ怒鳴られた・・・日本全国のヤンキーを追い求めて約5年。俺が見た、面白くて、ちょっぴり恐かったあの秘蔵話を大公開!(文 比嘉健二)

1989年秋、埼玉県東松山の某公園。きれいに晴れ渡った秋空のさわやかさとは真逆な光景。紫のニッカにさらしを巻いた13~16歳位の少女と、タイトのスーツを纏った、その少女達よりやや年上に見える少女の一団に取り囲まれた、大人二人。その大人の一人が俺だ。タイトスーツの少女が俺に向かって怒声を投げつけている。何も答えられず、ひたすらうつむく俺ともう一人の大人。彼はカメラマンの山下。山下もひたすらうつむいている。「なんで、私が来る前に後輩を先に撮ってしまうのよ! 私が来るのを待つのが常識でしょ!」そのチームの総長であるU子の怒りは収まりそうにない。「いや、だって遅れたのは君で、後輩達が先に撮って良いっていうから・・・」なんて言い訳は喉まででかかったが言えない。ひたすら頭を下げる。

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ティーンズロード回想録 よろしく流星 第4回 史上最強レディース 三河遠州女番連合(通称・女連)参上! 後編  [文:比嘉健二(ティーンズロード初代編集長)]

「女連伝説」として連載開始――三河遠州女番連合(以下スケレン)が巻頭で掲載したティーンズロード1991年2月号は売れに売れた。VOL5で低迷していたテーィンズロードが、東松山紫優嬢の掲載で爆発的に売れ、息を吹き返してからしばらくは安定路線で月刊誌としては順調ではいたが、もうひとつ勢いに乗れそうで乗れない時期でもあった。このスケレンの登場で、完全にティーンズロードはヤンキー雑誌として他誌を凌駕した。読者、他のレデーィスからの賛否両論の意見が凄かったのは、スケレンの存在がそれだけ印象的だったということの証でもあった。こんな存在感のあるチームはそうは出てこないだろう。これはなにか連載を開始して、毎月スケレンを登場させたい。しかし、ネックは活動拠点が愛知県なので、そう頻繁には訪れることはできない点だろう。 そこで考えたのが、もういちど初代会長のぶこに会い、集中的にインタビューして、何回かにわけて連載することだった。題して「女連伝説」、ストレートでなんのひねりもないが、読者はこういう判り易さを求めている。

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不良紳士 鈴木創士(写真・文:ヤマモトヨシコ)

神戸在住のアーティストであり、毎年番号がひとつずつ増えていく名前のギャラリーの運営もしている(なので今年はギャラリー8)ヤマモトヨシコさんは、ときどき思いついたように記事を送ってくれて、それがすごく意外な人選というか出会いで――ヲタ芸導師の一番先生から大阪の両性具有者まで――、このひとはどんな日常を送ってるんだろうといつも気になる。今回「こんなの書いてみました」と送ってくれたのは、なんと元EP-4のキーボードだった鈴木創士(すずき・そうし)さん。いったいどんなお話を聞かせてもらってきたんでしょうか!

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新連載! SNSの神々 第1回 アーケード商店街を愛する女(文:吉村智樹)

この連載では、SNSで作品や研究の成果を発表し、それによってカリスマ性を帯びる人々を紹介してゆきます。第1回目にご登場願うのは、名古屋にお住いの「あさみん」さん。「全国のアーケード商店街ばかりを旅している女性は、他にいないかもしれませんね」あさみんさんは、そう言います。あさみんさんは、「日本三大電気街」のひとつであり、下町情緒ただようアーケード商店街が横たわる「大須」で生まれ育ち、つい先日まで百貨店で販売員をしていた、ごく普通の女子です。しかしSNSの世界では、彼女はカリスマ・トラベラー。珍スポット、B級スポット、路上観察のたしなみがあるならば、あさみんさんの名を知らない人はいないでしょう。ブログ「BQ ~B-spot Explorer」やSNS、特にInstagramでの圧倒的な更新ぺースには、たじろがずにはいられません。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 6

上海市中心部から西に20キロほど、バスで40分ほどの郊外の団地に住む男性である。職業はGAPに働くグラフィック・デザイナー。もともとヘアスタイリストをめざしていたが、お客さんとの会話が苦手で断念。でもいまだに愛用のカット用ハサミは手放せないという。デザイナーとはいえ毎日職場に通勤しなくてはならないが、「定時に帰れないことは滅多にないです」という恵まれた環境のため、個人的に受けるデザイン仕事や、いろいろな趣味に費やす時間もたっぷりある。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 7

上海中心部に近い普陀区の団地に住むデザイナー夫婦。夫は山西省の田舎育ち、妻は上海人で、ふたりともデザイナー。夫は家で仕事、妻は職場に平日の毎日通っている。以前もこの近くの1ベッドルーム・アパートに住んでいたが、いま5歳になる娘が生まれたのをきっかけに、そこを売却してこの2ベッドルームの物件を、ローンを組んで購入した。建物は1996年にできたというが、すでにかなりの風格である。中国では物件を購入するとき、室内の家具調度はなにもないのが普通。なので入居時に内装工事や家具の調達をしなくてはならない。彼らはふたりともデザイナーなので、外に向いた壁を大きく開けて採光をよくしたり、さまざまな工夫で趣味のよい空間に仕上げてある。

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西成ガギグゲゴ「七人の侍」6 DJリハビリ(写真・文:くまがいはるき)

6年ぐらい前だったろうか びっこをひいた瞳孔が開いた男と、服の上からモビルスーツのようなコルセットをした、えびす顔の男が訪れた ふたりは関西人じゃないと、イントネーションですぐにわかった。えびす顔のほうは、七人の侍のひとりで前に紹介した「番頭さん」 瞳孔が開いた男は、今回の主役の「DJリハビリ」 番頭さんはだいたいニコニコしながらしゃべりまくるが、DJリハビリはドスが効いた雰囲気で、番頭さんに調子をあわせながら振る舞っている感じの間柄だった 出会った当初、DJリハビリからは強烈な死臭を感じた そろそろ逝ってしまうんじゃないかと思っていた

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SNSの神々 第6回 ビハインド・ザ・マスク(文:吉村智樹 写真:吉村智樹、ひょっかめ)

SNSを通じて自己表現をしたり、収集や観察の成果を発表したり。そうして熱い支持を集めるカリスマたちに迫る連載「SNSの神々」。第6回目は、奇しくもタイムリーなキーワードとなってしまった「マスク」にまつわる人々を紹介したい。マスクと言っても、もちろんドラッグストアから姿を消した医療用ではなく、頭にかぶる「お面」(ドールタイプマスク)を制作している人たちだ。「ひょっかめ」という、ひょうきんな語感のふたり組が東京を拠点に活躍している。Instagram、Facebook、Twitterなど主要SNSを駆使しながら、制作した愛らしいお面の画像を発表しているのだ。

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タキシードサムライ 3

徳山という地方都市から北新地、そしてついに夜の商売の頂点である銀座へと、わずか7年で駆け上がった三好三郎のラモール。 終戦後すぐに復活した銀座では昭和30年代、すでに大小さまざまのクラブがしのぎを削っていたが、その中心は有名なエスポワールのるみ子ママ、京都と銀座を飛行機で往復した 「空飛ぶマダム」おそめママなど、傑出したママたちのキャラクターがなにより売りの、小規模な店だった。 そういうなかに出店したラモールは 「銀座一高い店」 を最初から謳い、花田美奈子という魅力溢れるママを表に出しながらも、主役は豪華な調度と徹底したサービス、そしてなにより美しいホステスたちという、それまでになかったビジネス戦略による大型クラブ経営を目指していた。他店できれいな子を見つけたら積極的に引き抜く。「指名料」システムをいち早く取り入れて、ホステスという「夜の蝶」同士をいわばいわばライバルとして競わせる。有名作家や文化人は料金面で優遇して、広報に役立ってもらう。お金はその取り巻きたちから払ってもらえばいい。 昭和30 年代の銀座はラモールのような大型店の出現によって、それまでのカリスマ・マダムたちを核とする小さなソサエティから一変、その全盛期を迎えることになるのだった。

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タキシードサムライ 4 「砂の女」とソニービル

銀座マキシムを語るには、まず映画『砂の女』から始めなくてはならない。安部公房の原作を、草月流十二代目家元でありながら幅広い分野の芸術活動でも知られる勅使河原宏(昭和2 ~平成13年)が監督した特異な名作である。昭和37(1962)年にやはり安部公房原作のテレビドラマを映画化した『おとし穴』(自身初の長編劇映画であり、旧来の商業映画から一線を画す新たな映画表現を目指して設立されたATG初の日本映画でもある)が第15回カンヌ国際映画祭に出品されたが、それに続いて昭和39(1964)年につくられた『砂の女』はキネマ旬報ベストワン作品賞、同監督賞、毎日映画コンクール作品賞、同監督賞、優秀映画鑑賞会ベスト1位、NHK (映画賞)作品賞、同監督賞など国内の映画賞を総なめにしたあと、第17回カンヌ映画祭に出品されて審査員特別賞を受賞。そのほかサンフランシスコ映画祭外国映画部門銀賞、ベルギー批評家協会グランプリ、メキシコ映画雑誌協会賞といった栄誉に輝き、昭和41(1966)年の第37回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネート、第38回では監督賞にもノミネートされている(この年の監督賞を取ったのは『サウンド・オブ・ミュージック』だった)。戦後日本映画史に輝くこの作品の企画製作にあたったのが、三好三郎が設立したワールドフィルム社だったのである。

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タキシードサムライ 5(最終回) 飲食事業の展開

昭和41年、銀座ソニービル内にベルベデーレ、パブカーディナル、そしてマキシムを開店したあたりから、三好三郎の関心はクラブ経営からもっと幅広い飲食ビジネスへと移行していくことになった。ソニービル開館の翌年、昭和42年には大阪に「青冥(チンミン)堂島店」をオープン。まだ中華と言えばラーメン、チャーハン、シュウマイに餃子という発想が一般的だった時代に開業した、本格的な中華料理レストランだった。「ブルーヘヴン」を意味する店名は、中国文明に造詣の深かった作家・井上靖氏による命名。同年12月には前述の「エル・フラメンコ」を新宿に開いているし、昭和46年には銀座に続いて六本木にパブ・カーディナル六本木店を開く。当時の六本木はキャンティ、ベビードール、ドンク、シシリア、ハンバーガーインといった限られた店に「六本木族」「キャンティ族」が集まる先端的な街だったが、大箱ディスコが入るスクエアビルや、瀬里奈などの店が並ぶエリアの入口に開業したパブ・カーディナルは、六本木の夜のベースキャンプのような役割を担うことになって、夜ごとファッショナブルな男女で賑わい、『anan』など新しいファッション雑誌の撮影場所としても頻繁に登場するようになった。

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新連載! シブメグの人生小劇場 01 愛のナンバー2 (文:シブヤメグミ)

ついこのあいだ、コロナ禍をロックにサバイブするライブハウスの物語「四谷のけもの道」を書いてくれたシブヤメグミさん。長く新宿御苑前で秘密めいたバーを営業してきた。 ライブハウスの原稿打ち合わせで久しぶりにお茶したら、歌舞伎町の愛本店のホストといきなり仲良しになった話をしてくれて、「このひとはいったいどうやって、こんなにいろいろ突拍子もない人間たちと出会い、すぐに親しくなってしまうんだろう」という、積年の疑問というか驚きが再燃してきた。そんな出会いの数々をもっともっと聞かせてもらいたくなった。 これから月イチの連載で登場する、ほんとうにたくさんの、世間的には端っこや境界線上や外側にいるかもしれない、でも純粋な生きざま。 きょうはどんなひとに会わせてくれるんだろう!

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蒲田リハビリ日記 第5回  猛暑とコロナ第2波  左腕の血種と自主制作コミックエッセイ「脳梗塞患者手記」 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

頭が弱く、そのうえ血管も弱い。俺(現在51歳)のことだ。 33歳のとき、心臓の血管が裂けたため、心臓病(大動脈解離)を患った。45歳のとき、頸部(首)の血管が裂けたため、脳梗塞を患った。もともと血管が弱いのだが、病気になるほど悪化したのは、やはり長年の食生活がいけなかったのだろう。しかし、今回は大病に発展する部位ではないため、ただただ内出血の痛みに苦しむだけの日常を過ごした。 2020年8月31日(月曜日)午後1時ごろのことだ。突然の立ちくらみに見舞われ(小さな血栓が飛んだのか、ごくごく軽い脳梗塞が再発していた)、自宅で横になっていると、次第に左腕の内出血が広がり、痛みが増してゆく。原因がよくわからない。なぜ、こんなことになってしまったのか…。

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シブメグの人生小劇場 04  舞台裏のシスターフッド (文:シブヤメグミ)

グルーピーと聞いたところで、すぐさまピンとくる人はもうそんなにいないのかも。 その存在は、追っかけとも、今で言うところのバンギャとも決定的に違うのだ。 グルーピーの皆様の多くは、とにかくきれいだった。美人ばっかりだった。黙って立っていても目立つくらいの美人が、ミュージシャンの気を引こうとして突然!上半身脱いでおっぱい丸出しにして踊り出すとか、パンツを脱いでステージに投げるとか(脱ぎやすい紐パンが人気だったという噂)、お目当てのミュージシャンと写真撮る時は、必ず自分から腰に手を回してくっつく(というかくっつける)とか。そして洋楽のミュージシャンを狙う方が多かったので、英語が堪能だった。私の身近にいたグルーピーだけで語ってしまうけど、「好きなミュージシャンと寝ること」と「好きなミュージシャンの彼女になること」の2つに重きを置いていて、そのためにまずプロモーターやイベンターと寝ることもあると語っていた。

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蒲田リハビリ日記 第8回  B級民俗学ミーティング 東京都大田区蒲田周辺  下層ゴーストライターズ@ブックカフェ羽月(通称=羽田プリン) (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

「北海道や沖縄の人びとはもちろん、東北と九州とか、世界的に見れば狭くても日本は広いし、そもそも単一民族であるはずがない」とSさん(56歳)は熱っぽく語る。Sさんは大学院で社会学を専攻していたが、思うところあって中退し、フィールドワークと称して全国の低層地域を巡回している。国内には凡そ6~7種の民族が混在し、その集合体を日本人と呼んでいるに過ぎないというのがSさんの持論だ。 Sさんとは23年前、ゴーストライター派遣会社の養成所で知り合った。株主総会招集通知を改変する際、ともに1カ月間、都心にある証券専門の印刷会社で軟禁された間柄である。個性をいっさい出さないゴーストライター仕事は機械のように振る舞え、精神的にラクなので俺はけっこう好きだった。 その後、俺は零細企業を転々とする道(労働時間こそ長いが、給与+賞与で、こちらのほうが若干多く稼げた)を選んだが、Sさんは現在もゴーストライターを続けている。お互いにB級民俗学を追求しており、一昨年再会して以降、それぞれの活動(零細企業はB級民俗ネタの宝庫だった)を通じて知り得た情報を定期的に交換しているのだ。

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蒲田リハビリ日記 第9回  生活保護と不法投棄の廃地~ルポ森ケ崎 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

犯罪者は現場へ戻るというが、戻りたくなくても長い年月を経て、否応なく戻されてしまうこともある。ロス疑惑の三浦和義がそうだったように。俺はそんな大物ではなく、笑ってしまうような小物だが。 見渡すかぎり色のない景色が、ただ漠然と横たわっていた。森ケ崎には、曇り空がよく似合う。曇り空しか似合わない、といっても過言ではない。生活保護のKさん(54歳)に連れられ、なんとなくこの地を訪れたが、そこには人の神経を高ぶらせ、緊張を強いるものしか転がっていなかった(としか最初は思えなかった)。

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シブメグの人生小劇場 07 アダチさん、ありがとうございます (写真・文:シブヤメグミ)

こないだ、ぐりぐりのスパイラルパーマをかけた。 普通の美容院のスパイラルパーマでは飽き足らず、もう本当に本気のぐりぐりのがかけたくて、ドレッドやアフロの専門店に行ってかけた。ロットの数180本。重さ2キロ。5時間かかった。首と肩が痛くなったけど、ずーっとやりたかった髪型になって超ご機嫌。冷たい霧雨が降っていたけどなんだかそれが気持ちよくって、思う存分ハナウタを歌いながら歩きたかったから、慣れない代官山の慣れない裏道を何も考えずにズンズン歩いていった。 当たり前に迷子になった。静かな静かな住宅街。街灯も少なくてコンビニも見当たらない。ヤバい。それにしても目印になるような高層の建物も見当たらないし、暖を取れるような富士そばもないって、ここはどんな東京なんだよと、自分の浮かれっぷりを棚に上げて、バッテリー残量20%以下のiPhoneの地図アプリを恐る恐る起動させた瞬間に、 「アダチさん……アダチさんですよね?」

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蒲田リハビリ日記 第15回  失業見聞録 2021夏 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

血管障害でボロボロになった身体を抱え、これからどう生きてゆこうかと考える。今年53歳になる俺は、生涯を通じて「怪しく胡散臭い人や物事」を追求してきた。低次元の人や物事に偏ってしまったのは、俺自身の知的能力がひどく劣っているからだろう。スラム団地で生まれ育ち、焼肉屋とパチンコ屋に囲まれ、落ちこぼれとして小中高時代(中3二学期の内申書は「国語2」以外オール1)を過ごし、18歳上京後、日雇い労働者、クズネタ放送作家見習い、エロ本編集部アルバイト、悪趣味雑誌『GON!』の末席ライター、ブラック零細企業のコピーライターやダイレクトマーケター、低層貧民街の飲食店や非ヌキ系整体院の店舗開発と、世の中の最下層ラインを這うように生きてきたのだから。

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シブメグの人生小劇場 14  ストリート・ファイティング・マン (文:シブヤメグミ)

「あんたは昔っから乞食に優しかったわよねー」 と、母親が電話の向こうで笑いながら言った。 乞食に優しいって言い方なんなの? 私は人間に優しくありたいだけだよと言い返した。母親は小さく、あらごめんなさいと謝ったあとに、 「とにかく、新聞掲載のきっかけもあんたらしいし、このエピソードもあんたらしい。メグミの金太郎飴よ」 と、笑いながら電話を切った。

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蒲田リハビリ日記 第17回  2021秋冬「最低・最下層・負け組」コレクション  突然のスカトロジー・ダンディズム (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

ついに自前ノートPCが故障した。数カ月前からキーボードとタッチパネルに不具合が生じており、反応したりしなかったりだったのだが、一昨日、完全に壊れてしまったのだ。ゴーストライター仕事で通っているリハビリ専門学校の共用ノートPCを借り、スマホと併用しながら、この日記を書いている。スマホにも不具合が生じており、もはや時間の問題といっていい。どちらも長く使い込んできたため、そろそろ買い換える時期なのだろう。原稿料が振り込まれるまでの辛抱だ。ただ、こうも思う。果たして理事長の自伝・自費出版本は無事、完成するのだろうか? と。

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シブメグの人生小劇場 17  プカプカ (文:シブヤメグミ)

初めて会った時はランドセルを背負っていたエミリちゃん。こないだ高校3年生になった。 2011年9月、私は小さな小さなバーのママになった。 場所は新宿のはしっこ。最寄駅からまっすぐ歩いて少し曲がるだけなのに、ほとんどの人が迷ってしまうビルの地下。 地下なのに店名は"浮かぶ"。 初代のママさんが名付けた。 この店名にちなんで、営業していることを「浮かんでます」、閉める時には「沈みます」。 常連のお客様の間では、私が観劇やライブや旅の予定を入れて躊躇わずに休んでいるので、「沈んでばかりの"浮かぶ"」と言われている。

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エロチカ・バンブーの「ショーのためならどこまでも」

2015年8月05/12日号でお送りした「アナーキーゲイシャ・キス・キス!――エロチカ・バンブーの踊り子半生記」を皮切りに、もうロードサイダーズのみなさまにもおなじみの、バーレスクの生ける伝説!エロチカ・バンブー。彼女の近況はFacebookの投稿でいつも追っかけさせてもらってるのだが、今年の初めにベルリンから東京に居を移したと思ったら、春になってヨーロッパに踊りに行くと! しかもポーランドのクラクフに! それって、ウクライナからけっこう近いはずなのに大丈夫か……と心配していたら(クラクフからウクライナ西部のリビウまではたったの約300キロ)、すごくエネルギッシュな投稿が連続投下されてひと安心。無事に帰りついたタイミングで、巡業報告記を書いていただくことにした。停戦どころか、延々長引きそうな気配しかないウクライナ情勢に直面する東欧の国々の日常、メディアのニュースでは伝わらない日々の空気感を少しでも味わっていただけますよう。

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シブメグの人生小劇場 18  ごちそうさまが言いたくて (写真・文:シブヤメグミ)

ある朝、突然にブス期に入った。 目覚めて、ベッドからモゾモゾと這い上がって、それでも頭がぼんやりして動かない。身体をなんとか洗面所まで運ぶ。このダルさ、やる気のなさはいったいなんなのか。こんなことを思春期ぐらいから毎日のように思ってるなー。 冷たい水で顔を洗う。びしょびしょの顔を拭かずにそのまま上げる。と、鏡の中に超絶ブスな自分がいた。 うっわブス!どうしたブス? 昨日の自分、なにしたっけ?

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蒲田リハビリ日記 第19回  花 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

新宿(都築響一さんの新拠点)には様々な思い出がある。南新宿や新宿御苑の近くで働いたこともあれば、花園神社の酉の市で大騒ぎしたこと(コロナ前)もある。だが俺にとって最も忘れられないのは、1988(昭和63)年5月からの2カ月間だ。当時、日雇い労働中の自損事故でアキレス腱を断裂した俺は仕事を失い、先輩AV監督の紹介で初めて特殊ビデオの撮影現場へ足を踏み入れた。肩書きは撮影助手、19歳のときのことである。都下山間部(なぜか東京都!)の商業施設を改装するため、徒歩2分のところにあった寮に転居したばかりだった俺は、職を失い、9月末日までに退去するよう命じられていた。そんななか生活費を稼ぐため、左足を引きずりながら、片道40km以上の道程を原付で東新宿の撮影現場まで通っていたのである。19歳だから出来たのだろう。53歳で半病人の現在、とてもそんな体力はない…。

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シブメグの人生小劇場 20  スイートブール (写真・文:シブヤメグミ)

ブルースがパチンと流れる瞬間がある。 友人と自分の気持ちがすれ違った時、大人の事情で頭を下げている時、夜の散歩をしてる時、燻った匂いのお酒を飲んでいる時、盛大にフラれた時、フラれた相手と、なんでもない笑顔で話せるようになった時。 そんな瞬間はあげたらキリがないけど、私には熱烈な、「ブルース発火装置」と名付けても過言ではないブツがひとつだけある。 そのブツの名はスイートブール。

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シブメグの人生小劇場 26  懺悔の値打ちもない 第6章 エンドロール (文:シブヤメグミ)

10月26日号から11月23日号まで5回にわたって連続掲載した衝撃のシリーズ「懺悔の値打ちもない」。いまだ余韻さめやらない短期集中連載の扉を閉じるべく、今回はそのメイキング編を書いていただいた。

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蒲田リハビリ日記 第22回  続・遊廓の童 カストリ書房から色街写真家・紅子さんの個展へ (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

大病とコロナ禍を乗り越えた2024年の俺は、首都圏であれば、どこへでもイベントや取材へ出向こうと決めた。昨年、比嘉健二編集長の出版イベントや我らが都築響一さんを迎えたトークライブへ参加し、「全然、大丈夫じゃね?」と味を占めたからである。まずはカストリ書房店主・渡辺豪さんのご著書に署名サインをいただき、その足で新進気鋭の色街写真家・紅子さんの個展にも足を運んだ。そこでもご著書2冊にサインをいただいたのだが、「俺、ただのファンじゃね?」と思いつつも、よくよく考えれば俺はただのファンでしかなく、それ以外の何者でもなかった。現在55歳の元気な身障者だ。身体障害者3段である。頭も相当弱いが、身体も相当弱いのだ。

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シブメグの人生小劇場 34 「あんた」で「あたし」 (写真・文:シブヤメグミ)

住所読まないで  ペンネーム  生きるのって辛いねって  書いてあります  女の子からです    みゆきさんこんにちは  私  世界で一番のブスです  誰が見たってブスです  自分でもわかっています  わかってるんです  でも  人から  変な態度とられると  やっぱり  傷つくんですよね  周りの  友達から毎日ブスって言われて  街歩いてても  吐く真似されて 

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老遊女 11 85歳の熟女が働いている超熟女専門店Xに突撃!(文:中山美里 写真:谷口雅彦)

風俗のメッカである東京都内の某駅。そこには超熟女専門のデリヘルというものがある。ホームページを見てみると、所属している女性は40代後半以降で、50代、60代がメイン。70代、80代の女性もいて、最高年齢は80代半ばというから驚きである。しかし、実はこの店以外にも、都内には超熟女をウリにした風俗店がいくつかあり、いずれも60代以降の女性たちが何人も働いている。さすがに数は多くないため、駅名を書くと大方の検討がついてしまう。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 03 身体と心が不感症な私に(文:ウズメゆきこ)

毎年やってくる、風俗嬢たちにとって一年中でいちばん稼げる年末年始の繁忙期。ふだんどんなにモチベーションが低い女の子でも、年末だけは本気を出したりする。お店自体がとっても忙しくなって、店から女の子への出勤要請も止まらない。28(ニッパチ)と呼ばれる閑散期に備えるためにも、年中収入が不安定な風俗嬢たちはとにかく連勤! 鬼出勤! もちろん私も。デリヘル、ソープでゴム擦れ、乱暴な前戯で出血したら、キシロカイン(塗る麻酔薬)を塗りたくり、それでも私は出勤をやめない。そうして毎年連勤していくうちに、身体にガタがくるとともに、心が荒んでいき、性への嫌悪がやってくる。4年以上風俗をやってきて、やっとお金に余裕もできたので、自分主体で快楽を得たい!癒やされたい!という気持ちで、都築さんのメルマガ2017年2月15日配信号「快楽の先のどこか」で紹介されていた、玄斎さんを自腹で呼ぶことにした。玄斎さんの生い立ちなどはバックナンバーで読んでいただきたいが、もう30年にわたって鍼灸師、気功師、性セラピスト、性活アドバイスを「回氣堂」という店名で続けている。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 05 韓国美容整形旅行(文:ウズメゆきこ)

包帯グルグル巻きでうまく呼吸ができず息苦しい。少しでも動くと、顎に激痛が走る。看護師さんが2時間おきに様子を見に来るのだが、ここは韓国。言葉が通じないから、のどが痛くて水を飲ませてくれとせがむこともできない。私は江南の夜中の道路からひっきりなしに聞こえる救急車だか消防車だかの音を、ベッドの上で呆然と聞いているしかなかった。包帯グルグル巻きの私がなにをされたかって? 暴行? いやいや(笑)、整形の中でもっとも大掛かりと言われる輪郭手術の美容整形である。グロテスクな画像が苦手な方はここで回れ右、これは私が自分に好かれるための、自意識との格闘の記録なのだ。

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かなりピンボケ 11(番外篇)ピンパブ専門の呼び込み――亀戸の夜に20年以上立ち続ける“小さいおじさん”こと田中さんの自堕落半世記(文:比嘉健二 写真:福田光睦)

すっかりご無沙汰。あれだけ好きだったフィリピンパブの話もすっかり書く気力さえなくなり、そのグータラなところは、仕事嫌いで遊ぶ事が何より大好きな、フィリピン人男性化しつつあると、やや不安を覚えてる今日この頃なのだ。もっとも、書くという作業は放棄しているけど、相変わらず週に2、3回はピンパブで遊んでいるのだから、不安は見事に的中している。おそらくDNA鑑定したら、俺の血液は半分フィリピン人になっているはずだ。ところが今回、これは書かずにおけないというテーマに遭遇した。それはピンパブ専門の呼び込みを生業として、30年以上の人生をだいなしにした田中さん(たぶん仮名)。通称“小さいおじさん”という、こっちの世界ではそれなりに有名な人物の話を聞き出す事に成功したからだ。といっても他のメディアはどこも注目してないから、実際インタビューのオファーを出したら、意外にも即OKの返事が来た。もちろん舞い上がったのは俺ぐらいなものだろうけど。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 06 マンコンプレックスと潮吹きガール 前編(文:ウズメゆきこ)

みなさんお久しぶりです! 躁鬱の波に呑まれた数ヶ月で、風俗の収入も安定せず、なかなか精神的にもキツくて、書くことから距離を置いていました。それでは久しぶりにお付き合いくださいませ。女性のみなさんなら共感してくれるのかな……。私がアソコにコンプレックスを抱くようになったのは、初めての彼氏ができたとき。もちろん処女でした。お付き合いをしていくうちに、性的好奇心も旺盛なお年ごろだけに、私たちカップルの話題も、「○○組のあのカップルもうエッチしたらしいよ」「妊娠したら怖くない?」童貞と処女だけにこんな会話でした。でも、大好きになった彼氏も初体験をしてみたいんだろうなぁと、私もうすうす感づいてはいました。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 06 マンコンプレックスと潮吹きガール 後編(文:ウズメゆきこ)

「フェイク潮吹き」でとびっきりの笑顔をくれた、あのときの彼みたいにどんな男性も喜ばせられるようになりたいと願い、女性器の名器形成手術を受けられる病院を探した私。しかしそういう手術は当時あまり一般的ではなかったらしく、苦労の末に見つけたところは男性の包茎手術やED治療がメインで、女性用に併設されたクリニックに来るのは出産で緩くなった膣を縮小して、パートナーとの性生活をもっと楽しみたいというカップルや、結婚する相手が処女じゃないとダメだとの理由で処女膜再生の手術を受ける若い女性、性のプロの道を究めるために、名器形成にすでに1千万円以上!も注ぎ込んだという伝説の嬢もいた。

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SNSの神々 第2回 「春画人形」を愛する男(文:吉村智樹)

「都築響一さんがお書きになった『珍日本紀行』という、日本の珍スポットを集めた本がありますでしょう。この本に岡山県のカブトガニ博物館が出てきます。あのページに載っている巨大生物をつくったのが、私なんです」カズやんさん(58)は、そう言って、僕を驚かせた。ツイ廃(Twitter中毒)の僕は、以前から「春画人形の世界」というアカウントをフォローし、ツイートを楽しく読んでいた。アカウント「春画人形の世界」には、「+R18/集めている艶っぽい博多人形や土人形などを紹介します」という一貫したテーマがあり、たくさんの色っぽい人形がアップされ続けている。運用するのは「カズやん」と名乗る人だった。「自作の浮世絵四十八手人形も制作中」との短いプロフィールがあり、どうやら造形の仕事をしているらしい。しかし、詳しいプロフィールは、まったくわからなかった。

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DOMMUNEスナック芸術丸、2019年度前半プログラム、リリース開始!

日曜日に高松の特設スタジオから「リアルスナック芸術丸」を生配信したばかりのDOMMUNE。宇川くんのご厚意により、今年前半にお送りした3本のスナック芸術丸プログラムを、ロードサイダーズ購読者限定で公開してもらえる準備が整いました! これから3週にわたって、一本ずつご覧いただけるようにします。まずは1月23日に、伝説の初代編集長・比嘉健二さんを迎えてお送りした第53夜「青森のBOROと暴走レディース・ナイト」。連載では伝えきれなかった、現場を体験した人間のみが語れる暴走レディースたちのナマの生きざま! 後半も3時間たっぷりの「四つ打ち地獄」! 沖縄電子少女、かっこいいです! 見逃したかたも、ぜひこの機会にご視聴ください。

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DOMMUNEスナック芸術丸・再配信「ビル景のかなたに with 大竹伸朗」!

先週に続いて今年前半にお送りした3本のスナック芸術丸プログラムを、ロードサイダーズ購読者限定で公開してもらうDOMMUNEからのプレゼント! 今週は4月1日に、大竹伸朗氏を迎えてお送りした「ビル景」スペシャル! 2時間たっぷり、ふたりで語り合います。展覧会のことから、おたがい持ち寄ったレコード披露まで、ご堪能あれ!

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 08 ウズメマキエの『昼顔』 (文:ウズメゆきこ/写真:マキエマキ)

こんにちは、ウズメゆきこです。2019年もあいかわらずドラマティック(トラブルだらけ)の1年でした。躁鬱との闘い、在籍店からのパワハラ、失恋……なぜ楽しい記憶よりも、辛かった記憶ばかりが思い出されるのでしょうか。あまり良いとは言えなかった1年間の中で、特筆すべき明るい思い出を、憧れの人へのラブレターとして書いてみたいと思います。その人の名は「マキエマキ」さん。マキエさんを初めて見たのは都築さんのメルマガ。ホタテのビキニを堂々とまとい岩場でポーズをとる美熟女。思わずえっ!?、同時にニヤッと笑ってしまう、そこには不思議なインパクトがありました。

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SHANGHAI STYLE 当世上海住宅事情 case 12(最終回)

上海市内を蛇行しながら東と西に二分する黄埔江(こうほこう)。もともとの中心は西側(浦西)にあって、東側(浦東)は発展が遅れた地域だったが、いまでは浦東新区と呼ばれる超高層ビル街となり(上海を象徴する東方明珠電視塔などもこちら)、新旧入り乱れる楽しい地域でもある。彼女が住むのは昔ながらの団地の1階。地下鉄駅まで徒歩15分という微妙なロケーションだが、フリーの編集者で毎日出勤する必要がないのと、なんといってもここが20年間にわたって両親が住んできた部屋だから。

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かなりピンボケ 13  外出自粛編:毎日憂鬱、だからあの能天気な伝説のピンパブを語りたい (写真・文:比嘉健二)

高円寺「カレン」 JR高円寺駅高架下、飲み屋が密集した路地のど真ん中で、ほとんど下着姿に近い過激な露出のフィリピーナにブチュッとキスされる。「うわきだめよ、またあしたくるね、まってるからね、あいしてるからね」 ぴったり体を密着してこの別れの挨拶。高級ソープだってこんな見送りはしてくれないだろう。そんなやり取りに、かの有名な焼き鳥屋「大将」の客は100%軽蔑の眼差しを向ける。というか、あまりの醜態にまともに目を向けるのさえバカらしいというのが正解だろう。この羞恥にさすがの俺も最初は戸惑ったが、別に何も恥じらいがなくなるのがピンボケの所以である。ほどなくして俺はまったく、他人の視線をなんとも感じなくなってしまうほどに、脳内感染してしまったのだ。

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北九州市でラブドール強制ワイセツ事件発生! (写真・文 兵頭喜貴)

自宅を秘宝館にしてしまった「八潮秘宝館」の兵頭館長。2019年9月25日号では、貴重なラブドール・コレクションが盗難に遭った経緯を記した「ラブドール誘拐事件」を掲載したが、今度はなんと愛しいラブドールが「強制わいせつ」の被害者になるという、またも不可解な事件が勃発。その詳細な報告が届いたので、さっそく掲載させていただく。誘拐に強制わいせつって・・・・・・兵頭館長、いったいどんな邪念の嵐に見舞われているのだろう。

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蒲田リハビリ日記 第18回  ポルノ映画館の上映ポスターで大人になった (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

子どもの頃から現在まで「エロ」への強い思い、愛情がある。地方の低層貧民街に生まれ育ち、肉体を売ってでも強く生きてゆこうとする女性陣に圧倒されてきたからだ。彼女たちや、彼女たちを取り巻く胡散臭い男性陣の生き様を、生きた証を面白おかしく、魅力的に書き記すことこそが、俺の唯一の存在意義であり、人生のテーマだと思っている。路地裏で怪しげな光彩を放つポルノ映画館や国鉄高架下の非合法性風俗店、密かに蠢く複数の主婦売春グループ、売春で何度も補導される女子中高生たちに囲まれて俺は成長し、その街の薄汚れた団地の悪ガキとして18歳までを過ごしたのだから。

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シブメグの人生小劇場 31  あなたに優しいパンク (写真・文:シブヤメグミ)

先週号の編集後記で紹介した山ぐるみの展覧会。いま御徒町mograg galleryで開催中ですが、先週土曜日に開催した山ぐるみ、沖冲と僕でのトークにシブヤメグミさんが来てくれて、その内容を一晩でまとめてくれました! 会場に来れなかったかたに読んでいただけたらうれしいです。展覧会は26日まで!

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シブメグの人生小劇場 32  マジックアワー (写真・文:シブヤメグミ)

一分一秒でも長く、咲いていて欲しかった花が枯れた。 新宿五丁目東の交差点に、一輪だけ彼岸花。 私は新宿に10年以上住んでいるのに、こんなところに彼岸花が咲くことを知らなかった。 あの夜はひどく酔っ払っていた。 何をどう飲んだか思い出せない。 途中から、これ全部アルコールだろ、じゃあどうでもいいだろ、なんてホザきながら飲んでいた記憶だけがぼんやりある。 乾いた喉をなんとかしたくて、コンビニでアイスを買った。 大好きなホワイトサワー味のパピコ。通称白パピ。 でもなー、2本食べるテンションじゃないんだよなー。 買った白パピを眺めながら、角海老ビルの横断歩道の信号を待ってた。 とりあえず1本食べはじめる。 いつもの味が喉を通り過ぎて安心してたら、信号が青になった。 松屋がまだ開いてる。 カレーをキメるのはやんちゃ過ぎるよなーって考えていたら、熱烈に何かを見つめているホームレスのおじさんに気がついた。

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肉筆――ゆきこの日々これ風俗 10  世界を股にかける風俗嬢 (文:ウズメゆきこ)

お久しぶりです。今回は海外出稼ぎについて私の体験談を綴りたいと思います。 海外出稼ぎとは海外に行って現地の風俗で働いて稼ぐこと。 私は今回はアメリカに行って来ました。 Esta(米国ビザ免除プログラム)で観光ビザ入国したのですが・・・・・・報道などでご存知のとおり、日本から女の子がたくさん出稼ぎに行っているのが現状です。リスクを伴ってでも稼ぎたい女の子がたくさんいるのです。

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DOMMUNEスナック芸術丸、アーカイブ2本4時間同時公開!

恵比寿で1枚だけのアナログレコードをカットしてくれるスタジオ「CUT BY 1977 RECORDS」を運営する「ロディオ」くんと、本メルマガではおなじみのグッチ山口さんをゲストに迎えて2時間たっぷりお送りした、2018年7月10日のスナック芸術丸・第四十八夜「宇宙で一枚だけのレコード」。メルマガ購読者限定特典として、アーカイブへのリンクが準備できました。恵比寿のスタジオから、DOMMUNEにカッティングマシンを持ち込んで、生配信中のライブ・カッティングにも挑戦! 後半3時間超のDJタイムとあわせて、たっぷりお楽しみください!

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DOMMUNE スナック芸術丸「レディース・ナイト」、購読者限定アーカイブ!

1月23日に生配信したばかりのDOMMUNE スナック芸術丸「青森のBOROと暴走レディース・ナイト」、いつものようにメルマガ購読者限定の再視聴リンクをいただきました。宇川くん、ありがとう! 伝説のレディース専門誌『ティーンズロード』初代編集長・比嘉健二さんをお迎えしての2時間。予想外の反響を巻き起こしたプログラムを、ぜひじっくり味わい直してください!

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DOMMUNEスナック芸術丸・再配信「BONE MUSIC」5時間スペシャル!

今年前半にお送りした3本のスナック芸術丸プログラムを、ロードサイダーズ購読者限定で公開してもらうDOMMUNEからのプレゼント! 最終回の今回は、原宿での展覧会にあわせて4月27日に特別配信された、「BONE MUSIC」5時間スペシャル! ソヴィエト冷戦時代、レントゲン写真に音を刻んだ奇跡と感動の音楽秘話。ロンドンから展覧会のキュレーションを担当したスティーヴン・コーツとポール・ハートフィールド、さらにBird、Seiho、そしてオープンリール・アンサンブルの和田永各氏によるライブ演奏を、その場でレントゲンフィルムにカッティングする実演もあり! DJ Licaxxxによる、ボーン・レコードによるDJプレイまであり! 丸々5時間ノンストップ・・・・・・ボーン・レコードに関して、これだけ充実のプログラムは世界のどこを探しても、他にないはず。気合い入れて、じっくりお楽しみください!

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蒲田リハビリ日記 第21回  30年後の雑誌狂時代  都築響一×比嘉健二著『特攻服を着た少女と1825日』 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

2023年は比嘉健二編集長の出版記念イベントや、我らが都築響一さんを迎えたトークライブが開催され、アッという間の一年だった。気づいたら俺も55歳だ。高卒37年目の身体障害者として様々な痛みを抱えつつ、日々、何とかギリギリ生きている。都築さんとは3年前に一度お会いしたきりで、当然といえば当然だが、俺の顔は完全に忘れられていた。マスクを外し、すぐさまご挨拶するべきだったが、社交性ゼロの俺は会釈だけし、そのまま無言で立ち去ったのである。我ながら呆れてものがいえない。コミュニケーション能力が大切であることは、経験上、頭ではよく分かっている。だがある日突然、瞬時に対応するのは難しい。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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