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2023年02月22日 Vol.538

photography

漁師町とタイワニーズ・キャバレー ――沈昭良写真展「續行」

台湾通いの再開に羅東を選んだのは、羅東文化工場という複合文化施設でいま、沈昭良(シェン・ジャオリャン)の写真展「續行=Continuance Journey」が開かれているから。沈昭良は台湾を代表するドキュメンタリー・フォトグラファー。ロードサイダーズでは2012年5月23日号での写真集『STAGE』の書評にはじまり、2014年5月21日号「移動祝祭車」など、彼が長年にわたって記録してきた「ステージカー」シリーズを中心に何度も紹介してきた。2021年11月17日号では連載「Freestyle China 即興中華」で、吉井忍さんによるステージカー研究者への長文インタビューも掲載している。昨年12月29日に始まった展覧会は、長さ114メートルに及ぶ中空のスカイギャラリーを使って、半分をステージカーのシリーズ「STAGE」、もう半分を羅東近くの南方澳(ナンファンアオ)漁港を撮影した「映像・南方澳」にあてて、1995年から2021年まで30年間近くに及ぶドキュメンタリーの仕事を紹介している。

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book

捨てられなかった本のこと 03 日本の壁

先々週、先週と現代と1930~40年代のフランスにおけるグラフィティを紹介したので、というわけでもないけれど今週は「日本の壁」。古代から現代までの日本の建築をいろどってきた、おもに和風の日本壁を左官工事という観点から概観した、マニアックではあるけれど同時に素晴らしく美しい図版が見られる貴重な一冊だ。著者の山田幸一は1925年生まれの建築学者。京都帝国大学工学部建築学科を卒業し、鹿島建設に勤務しながら京大大学院の特別研究生となり、1961年に「日本壁の歴史的研究」で京都大学博士号を取得。左官工事と日本壁について数冊の書籍を発表してきた(1992年死去)。撮影を担当した井上博道(はくどう 1931-2012)は大和路を生涯にわたって撮り続けた写真家である。

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photography

妄想ホテル room:023  高校教師がヌードになる。それくらい世界は自由で楽しいと知ってほしい。 (写真・文 フクサコアヤコ)

ある日一通のメッセージが届いた。 「来月東京へ行きます。また撮っていただけませんか」 地方都市で高校教師をしている女性からのメッセージだった。 彼女との撮影はこれが初めてではない。以前、学校の夏休みを利用して上京した彼女をラブホテルで撮影したことがある。その時も今回と同じように彼女はきっぱりと「ヌードでお願いします」と言った。 なぜ高校の教師がヌードになるのか? 不思議に思いつつも高校教師という言葉に甘い背徳感を覚えつつ撮影したのを覚えている。 話を聞いていくうちに彼女がなぜヌード撮影をしようと思ったのか知ることができた。 「高校教師がヌードを撮られるということ」にはAVのシチュエーションとは違う教育現場に立つ彼女なりの思いがあったのだった。

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travel

地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記  #休獄日~ラーチャブリーとカンチャナブリー ราชบุรีาและกาญจนบุรี (写真・文:椋橋彩香)

2016年9月4日~5日  パタヤとサメット島を満喫し、3日ぶりにナコンパトム県の下宿先へ帰宅した。 久々に帰ってみるとどこか安心感があり、この家はすでに我が家となりつつあることに気づく。 翌朝、この日は家族で少し遠くまで出かけると聞き、私ももれなくついて行くことになった。 家族が言うには「タンブン(積徳する)」らしいのだが、詳細はよく聞き取れず。どうやら寺院の催し物に参加するみたいだった。 この「タンブン」は、タイにおいて欠かせない習慣のひとつである。

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photography

ニュー・シャッター・パラダイス 38  アイラブ… (写真・文:オカダキサラ)

昭和ギリギリに生まれ、人生のほとんどを平成の中で生きてきました。 私が学生のころ、大きくなってからもぬいぐるみを持ち歩く女子は、「少女趣味だ」と認識されていた気がします。 「幼い」はもちろんですが、「女の子らしい」がついていたことに、腑に落ちない何かを感じていました。 このモヤモヤの原因が「性差」からくるものだと知ったのは、「ジェンダーバイアス」という言葉を聞くようになってからです。

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fashion

Tシャツをめくるシティボーイ 第15回  渋カジとは何だったのか・その3 / 文:高畑鍬名(QTV)

Tシャツをめくるシティボーイ。 第15回も「渋カジ」とは何だったのか考えていきます。 前回は「渋カジ元年」とされる1989年その当時の雑誌をめくっていきました。 ファッション雑誌として渋カジを最初に取り上げた『Checkmate』や、 『Hot-Dog PRESS』の紙面で渋カジがどのように紹介されてきたか見ていきました。 今回は『POPEYE』と渋カジの関係に焦点をあてていきます。 連載の初回で、渋カジにおいて『POPEYE』が果たした役割や、 雑誌がストリートを後追いしたことを裏付ける「敗北宣言」についてふれました。 あらためて問題点を確認しながら、実際の誌面をめくっていきましょう。

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2023年02月15日 Vol.537

travel

マルセイユ・グラフィティ散歩

先月から「狩猟自然博物館」「移動遊園地博物館」と巡ってきたパリ・ミュージアム紀行。今週はちょっと遠足して南仏マルセイユに移動、街まるごとが美術館みたいなグラフィティ/ストリートアート散歩をしてみたい。 元タバコ工場を使った巨大な複合文化施設ラ・フリッシュで開催された『MANGARO』展を、2014年11月12日号「ヘタウマの現在形」で特集したマルセイユは、TGVでパリから約3時間。南フランス最大の都市でありパリ、リヨンに次いでフランス第3位の規模。紀元前600年に生まれたフランス最古の都市であり、地中海最大の貿易港でもあり、「フレンチ・コネクション2」や「タクシー」など多くの映画の舞台になってきたし、サッカー・ファンにとってはパリ・サンジェルマンと優勝を争う強豪アリンピック・マルセイユでも知られているだろう。

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book

捨てられなかった本のこと 02 GRAFFITI

マルセイユのグラフィティ記事を書いていてふと思い出し、先週の「ワンダフル・タイム」とはまるで違う世界を撮影した「グラフィティ」を、今週の捨てられなかった本として紹介する。 ブラッサイ(Brassaï)は写真好きならだれでも知っている名前だろう。1899年オーストリア=ハンガリー帝国(現ルーマニア)ブラショヴ生まれ。第一次世界大戦に従軍したあとベルリンを経て1924年にパリに移住。ピカソ、ジャコメッティ、マティスら同時代の芸術家たちと親交を結び、1984年に亡くなるまでパリのさまざまな貌を捉えた写真集を発表し続けた。とりわけ1933年に発表された「夜のパリ(Paris de Nuit)」は写真史に残る傑作。さまざまなかたちでいまも世に出ているので、ブラッサイと知らずに見ているかたも多いかもしれない。

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travel

韓国、うっかり美味しいもの紀行 後編 (写真・文:アーバンのママ)

ヨロブン、アンニョンハセヨ~! アーバンのママです。 韓国、うっかり美味しいもの紀行の後編をお届け致します! さてその前に……。 皆さん、2002年に放映され一世を風靡した『冬のソナタ』はもちろんご存知だと思うのですが、実際に見たことある方はどのくらいおられますか? かくいうわたしも、冬ソナ未体験……。しかしあるとき、これだけ韓国好きで冬ソナ見てないってヤバくない?と気づき、2022年には友人たちと月に一度集まり「初ソナ(初めて冬ソナを見る会)」を決行しました。

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fashion

Tシャツをめくるシティボーイ 第14回  渋カジとは何だったのか・その2 / 文:高畑鍬名(QTV)

Tシャツをめくるシティボーイ。 第14回も「渋カジ」について掘り下げていきます。 前回は渋カジの歴史的な位置づけをみていきました。 初めて街が産んだスタイルだったこと。 若者たちが「お仕着せ」のトータルファッションから、 自分たちなりに定番アイテムを「編集」して服を着こなすように変化したこと。 渋谷カジュアル、略して渋カジの歴史的な位置づけとして、大切なのはこの2点です。

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art

波磨茜也香のおんなのこ散歩 第21回 明日から頑張る

4月3日(水) 本日は新1年生の入学式。 2年生へと進級する我々は本来ならば休みのはずだったのだが、なぜか「2年生代表」という枠に選抜され式に出席することになった。メンバーは私、K子などを含む4、5人。式中は特に出番はなくただ椅子に座り立ってお辞儀して拍手してを繰り返すのであった。 1年生入場時、事前に入場から着席まで通しで練習しているはずだが、一人の生徒がテンパり一部グダグダな入場になっていた。焦る教員たち、空洞な眼でその光景を見つめる我々、彼らに思う事はただ一つ「これから地獄ぞ」。

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2023年02月08日 Vol.536

book

捨てられなかった本のこと 01 A Wonderful Time

去年春、30数年ぶりに引っ越して、この機会に身軽になろうと一念発起。いろんなものを整理したなかで、本はたぶんダンボール箱200箱以上を業者さんなどに引き取ってもらった。もしかしたらいまごろ、そのなかのどれかを古書店で買ってくれたひとがいるかもと思うと楽しいが、それだけ処分しても新居に設置した壁一面の本棚からすでにあふれる状態。日常どうしても必要という本なんて一冊もないのに、冷蔵庫の奥に入れたままの調味料みたいに「とりあえずこれはもう少し置いておこう」という、捨てられなかった本が何百冊もあり、「捨てられないTシャツ」ではないけれど、個人的に「捨てられなかった本」のことを毎回一冊ずつ紹介したいと引越直後に思い立った。ずいぶん時間が経ってしまったけれど、これから毎週、というのは無理かもだが、なるべく頻繁に更新しながら、迷ったあげく処分できなかった本のことを書いていきたい。その一冊目はこれ、『A Wonderful time』という大判の写真集。実は僕がいちばん大切にしている写真集のひとつだ。

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lifestyle

蒲田リハビリ日記 第20回  遊廓の童  故郷・名古屋市北区に「城東園」があった頃 (写真・文:リーサル・ウエポン金本)

2014年に脳梗塞を患って以降、脳外科で常用薬を調整してもらってきたため、その12年前(2002年)に心臓病(大動脈解離)を患っていたことを、忘れていたわけではないが…、どこか二の次になっていた。昨年の暑い夏、ふと思い立ってエコー検査を受けたところ、数日後、主治医から直々に、こういった内容の電話連絡が入る。「そろそろ入院できるようになってきたので、ぜひ再検査してほしい!」と。自覚症状は特になかったが、嫌な予感がしないでもない。すぐに死ぬことはないと思うが、つい我が人生を振り返ってしまう。 地方(愛知県名古屋市北区)の低層貧民街で生まれ育った俺だが、思えば中3の終わり頃から20代後半まで、ずっと周囲の人に恵まれて毎日がとても楽しかった。感謝しかない。悪趣味雑誌『GON!』の末席ライターとしてスタートした俺だが、その25年後には都築響一さん主筆のメルマガ"ROADSIDERS' weekly"でも連載(不定期)を持たせていただき、もはや人生に思い残すこともない。

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photography

ニュー・シャッター・パラダイス 37  ずっと太古から走っている (写真・文:オカダキサラ)

余裕を持って生きたい。 そう思って約束の時刻よりも前に現地についているように心がけてはいるのですが、何回かに一回は必ずギリギリになってしまいます。 事故や天災ならまだしも、原因は自分のウッカリによるものがほとんどなので言い訳のしようがありません。全速力で目的地に向かって走りつつ自分を罵倒します。 周りを見渡すと、大抵どこかに走っている人がいます。

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fashion

Tシャツをめくるシティボーイ 第13回  渋カジとは何だったのか・その1 / 文:高畑鍬名(QTV)

Tシャツをめくるシティボーイ。 第13回は「渋カジ」とはなんだったのか。 戦後日本のファッション史における最大のターニングポイントについて、 何回かに分けてじっくりと見ていければと思います。 今回は、なぜ「最大のターニングポイント」になるのか、 渋カジの特異性について、ファッション研究者たちの言葉を見ていきます。 しかしそもそも渋カジ、とい聞いてピンとくる世代と、 何の略称だろうかと考える世代と、略称であることすら知らない世代と。 渋カジは「渋谷カジュアル」もしくは「渋谷カジュアル族」の略称で、 この連載の第1回では、渋カジと『POPEYE』の関係について触れました。 なかでも、渋カジが日本で初めて「街が産んだスタイル」であったことに注目しました。

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travel

地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記  #休獄日~パタヤとサメット島 เมืองพัทยาและเกาะเสม็ด (写真・文:椋橋彩香)

2016年8月31日(続き)~9月2日  前号#13ワット・セーンスックで寺院の人にアンケート用紙を託すと、我々(私&珍スポット好きな知人2名)は、次の目的地・パタヤにある「サンクチュアリーオブトゥルース」へと向かった。 この神々しい名前の場所は、タイ人実業家であったレック・ビリヤファント氏によって創設・設計された巨大木造建築。見た目はワット(寺院)のようだが、公式ではミュージアムとのこと。タイ語では通称プラサート・サッチャタム、プラサートは城の意だ。 その最大の特徴は、1981年より現在も建設が進められていることで、「タイのサグラダファミリア」と呼ばれている。

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design

街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化 08 80年代のYMOとその時代~高橋幸宏さんを偲んで(後編) (文:浜里堅太郎)

今週も先週に引き続き高橋幸宏さん追悼特集をお届けします。 本稿では80年代前半の高橋幸宏さんがデザインした衣装レプリカの一部や、YMOブームに拍車をかけたフジカセットキャンペーン関連アイテム、細野晴臣さんと高橋幸宏さんが発足したYENレーベル関連の印刷物などから当時を振り返ってみたいと思います。そして先週の原稿を入稿した直後に飛び込んできた悲しいニュース…高橋幸宏さんに深い関わりをもつ唯一無二のギタリスト鮎川誠さんがご逝去されました。YMOファンにとってもシーナ&ロケッツは切っても切り離せない大切なバンドのひとつでした。そこで今回は以前ご紹介したシナロケのチラシも再掲しつつ、偉大なミュージシャン高橋幸宏さんと鮎川誠さんを偲びたいと思います。

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2023年02月01日 Vol.535

design

昭和が見た夢

梅田大阪駅からすぐなのに大阪屈指の下町感というか、庶民的なエネルギーあふれる天神橋筋商店街。全長2.6km、地下鉄2区間分の距離に600もの商店が軒を連ねる、日本一長いアーケード商店街である天神橋筋商店街が大好きというひとはたくさんいるだろう(僕もそのひとり)。『珍日本超老伝』で取り上げた食堂・宇宙家族も天神橋筋商店街を含む広大な繁華街・天満(てんま)の一角、天五中崎通商店街にあった。 出張では梅田周辺のビジネスホテルに泊まることが多いので、歩いても行ける天満はずっとなじみ深い場所だったが、これだけ通っていながら商店街の端の一端、阪急・天神橋筋六丁目駅と直結している「大阪市立住まいのミュージアム(愛称・大阪くらしの今昔館)」のことはまったく知らないでいた。「住まい」をテーマにした日本初の専門博物館として2001年に開館、もう20年以上経つというのに。

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街にチラシがあったころ ――1985~90年代の日本のインディーズ・チラシとアンダーグラウンド文化  07 80年代のYMOとその時代~高橋幸宏さんを偲んで(前編) (文:浜里堅太郎)

高橋幸宏さんが亡くなられた。2020年に手術をされた後、復帰に向けてリハビリする姿をSNSなどで拝見する度に、回復することを切に願っていたのだけれど… 当連載「街にチラシがあったころ」では「K林さん」という方から譲り受けたインディーズバンドチラシを紹介していますが、実は同時に、80年代前半のYMO関連の新聞記事切り抜き、チラシ、ファンクラブ向け印刷物なども譲り受けていました。とくに音楽雑誌に比べて、ほぼ残らないであろう新聞記事の切り抜きは、YMOが社会現象だったことを実感できる大変貴重なものでした。そして1982年の高橋幸宏さんが自ら死生観を語った珍しい記事も見つけることができました。これらはインディーズチラシ紹介の番外編として、いずれ紹介するつもりだったのですが…

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travel

地獄よいとこいちどはおいで――タイ地獄寺巡礼記  #13 ワット・セーンスック วัดแสนสุข (写真・文:椋橋彩香)

2016年8月31日  前号で夜のバンコクを堪能した知人たちと、この日は朝から2泊3日の小旅行へ。 いわゆる珍スポットめぐりと島でのバカンスを楽しむため、バンコクから南下して、有名リゾート地・パタヤへ向かう。 途中、チョンブリー県のバンセーという海辺の街にある地獄寺、ワット・セーンスックへ寄る。 私が地獄寺を研究していることを知っている知人たちがぜひ行きたいとのことで、調査もかねて旅程に組み込んでもらったのだ。 ワット・セーンスックは、バンコクから2時間ほどで行くことができるうえ規模も大きいため、多くの人が訪れている有名な地獄寺である。地獄エリアがつくられたのは1963年頃と、#10ワット・プートウドムに次いで2番目に古い。地獄寺の先駆けともいえる寺院だ。

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photography

once upon a time ~ もうひとつのカリフォルニア・ドリーミン 06  インドでの洗礼/ ブルース・オズボーン(写真家)

色水を掛け合って春の訪れを祝うホーリー祭の日に、一緒に旅をしてきたビルを見送り一人旅が始まった アメリカをボブとビルと3人で出発してから早くも4カ月が経過。ボブが帰国して2人旅になりそして、カルカッタでのペイントフェスティバルの最中にビルを見送っての一人旅。放浪生活にもだいぶ慣れての気楽な旅の始まりだった。 カルカッタの喧騒をあとにネパールを目指そうと思ったが、その途中にインド北東部のアッサムやダージリンを経由することにした。ダージリンという名前の由来は、チベット語の「雷が落ちた場所」 だそう。背景にヒマラヤ山脈があり街を取り囲むように茶畑の丘が続く。

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fashion

Tシャツをめくるシティボーイ 第12回  電車男とは何だったのか 後編 / 文:高畑鍬名(QTV)

Tシャツをめくるシティボーイ。 第12回は再び『電車男』とはなんだったのか、考えます。 前回は映画版とドラマ版の『電車男』に登場するTシャツの裾を細かく見ていきました。 200枚近くの場面写真から見えてきたのは、 「ファッションを脱オタクしても、主人公は救われない」ということ。 むしろ「脱」ではなく、主人公たちは自らのオタク性をさらけ出すことで人生を切り開く。 そんな『電車男』の物語に、Tシャツの裾が応答していることでした。 しかし、そんな物語の核心とは関係なく、2005年の電車男ブームによって、 お茶の間では「タックイン=ださい」という図式が圧倒的に浸透します。 2005年に発売された『脱オタクファッションガイド』は、 2009年に『脱オタクファッションガイド 改』として改訂版が、 さらに2016年にはリニューアルして『脱オタクファッションバイブル』が出版されました。 それほどまでに、オタクファッションは脱するべき、という社会的な圧力がオタクの方々に重くのしかかっていたのでした。

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art

暇と創造の宮殿、UPPALACE

大阪市の最南東に位置する平野区。静かな住宅地の奥にあるアトリエひこは、知的障害を持つメンバーたちが集う自主運営アトリエ。ロードサイダーズではおなじみのアーティスト、松本国三が長く通い、制作を続けてきた場所でもあり、僕も何度も遊びに行かせてもらってきた。 アトリエひこは平野の長屋を拠点に1994年から、もう29年間も続いてきたが、突然立ち退きの危機が訪れる。アトリエを運営する石崎史子さんに経緯を伺うと――「2020年に代替りした大家さんから、アトリエひこ含め四軒長屋すべての立ち退きもしくは買取りの話がきました。障害福祉サービスの事業所ではなく、自主運営の零細アトリエなので、資金もマンパワーもなく、ひこくん(大江正彦)にとっては家の前のあの場所でないと通えないという、背に腹はかえられない事情もありました。そこで、ひこくんの弟さんの英明さんが「ぼくがなんとかする」と、四軒とも買ってくれたのでした。とりあえず立ち退き危機は免れましたが、この先のことはなにも決まっていません。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

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ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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