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AFTER HOURS
編集後記

2015年06月10日 Vol.167

今週も最後までお付き合いありがとうございました。気に入っていただけた記事、あったらうれしいです。

先週の後記で書いたように、週末は竹橋の科学技術館で『全国刑務所作業製品・展示即売会』をたっぷり楽しんできました。今年が第57回、半世紀以上の歴史を持つ、実は大人気イベントです。

2008年に『刑務所良品 Made in Prison』(アスペクト刊)を出版して以来、刑務所がひっそり作り続ける「もっとも日本的なるもの」に並々ならぬ興味をいだいてから、もうずいぶんたちます。毎年とはいかないけれど、なるべく通いつづけ、おもしろがりつづけたいもの。ほんとはこういうのを、デザイン・ミュージアムで展覧会してほしいものですが。

というわけで今週の後記は、「全国刑務所作業製品・展示即売会」訪問記。後記らしからぬボリューム、お楽しみいただけますよう!


科学技術館が一年でいちばん混む日のひとつである全国矯正展当日。テープカットが終わり、EXILE ATSUSHIファンが大挙引き上げたところ。




会場内はまるで古典的な刑務所のように(?)、中心から放射形に広がる展示室に、それぞれの刑務所がブースを設置している。


ゆるキャラもなんとなく、ゆるくない雰囲気。


毎年関係者の注目をいちばん集めるのが、「審査会入賞作品」展示コーナー。このために受刑者と刑務官が力を合わせて一年間、がんばってきたのだ。


今年の法務大臣賞、事務次官賞など。


函館少年刑務所のポーチが法務大臣賞、広島刑務所の「キラキラ反射ポーチ」が事務次官賞というのは、逆でもいい気が・・・。


こちらは渋い麓刑務所製の手縫い名刺入れ・ペンケースセット


典型的な家庭用品と、意外な創作系が混交しているところが矯正展の醍醐味だ。宮城刑務所製のリュックサックは大仏と雷門と富士山をあしらい、外国人旅行客に人気出そう。


そして各地の刑務所は、それぞれ得意分野の製品を出品する。高松刑務所は石材加工に定評あり。6寸5万6800円、7寸6万7900円という石臼は、市場価格に比べて安いのだろうか・・・。


石臼と同じ庵治石(香川特産の花崗岩)のマウスパッド。これはほしい!


革細工で定評ある沖縄刑務所は、今年もアメ横で売ってそうなデザインの長財布を出品。これで8650円はお買い得だ。


刑務所によっては、自慢のユニフォームを着用していて興味深い。沖縄刑務所のポロシャツはかなり欲しかったが、「非売品」と言われて断念。


今回やけに人気が集中していたのが、富山刑務所製の「縦型ティッシュボックス。ひのき製のしっかりしたつくりで、税込み600円はたしかにお買い得!


名古屋刑務所自慢の携帯オセロゲーム。旅行中など、ゲームの途中で移動しなくてはならなくなっても、ベルクロで盤にひっついてくれる。


なのでこんなふうに折り畳んで、


はい、出来上がり。たしかに便利だ。販売スタッフはすべて刑務官たちなので、こんなふうに気軽にお話できるのは稀なチャンス。長期受刑者になっても、こうはいきません。


家具と並んで布製品が特異な広島刑務所からは、保冷剤収納バンドも登場。「節電中」とか、コピーも渋い。しかも500円!


京都刑務所の新製品は「積み木」。9500円は立派な値段だが、


ちゃんと「マル京」のマーク入り。


盛岡少年刑務所の「おもちゃ箱兼跳び箱」も注目を集めていた。



デザイン・センスで一世を風靡した函館少年刑務所は、今年も安定の人気ぶり。




大物、小物と飛ぶように売れていく。


函館市のゆるキャラ「イカール星人」と、函館少刑の「マル獄」マークをコラボさせた「イカール星人メモ」、わずか180円!


メモ帳はいろいろな刑務所が出品ていた。こちらは日本最大級の府中刑務所製プリズン・メモ帳。120円! 英語表記が、さすが外国人受刑者も多い刑務所らしい。


全国矯正展の華、御神輿。以前、千葉刑務所の1千万円オーバーの逸品を見たことがあるが、今年は富山刑務所製が出展。子供神輿サイズが21万円と格安! 既成品の組み合わせで、低価格を実現したそう。








家具を目当てに真剣な買い物客も少なくない。数が限られているので、早めに来てじっくり吟味。


イケアにも大塚家具にもない、斬新なデザインも見受けられる。


木工技術をいかしたドールハウス。


矯正協会による刑務作業製品を示すキャピックの名がついた、キャピックハウス。横浜刑務所製、3万9800円。


ガーデン製品も変わらぬ人気を保ち、各地の刑務所が競って製品を出展してくる。


バーベキュー用品は、普通に比べてかなり割安感がある。庭があったらほしいところ・・・。


「万能かまど用地鶏焼き網」なんてピンポイントな製品も。鹿児島刑務所製。


展示のセンターエリアで、いつも人気を集めるのが革靴販売コーナー。


革靴といえばまず徳島刑務所が有名。ここの幅広ウォーキングタイプは、実は僕も長年愛用してます。


徳島の盛況を羨ましそうに見ていた福岡刑務所。


全国矯正展の、もうひとつの興味は、さまざまな研究発表、資料公開コーナーだ。こちらではアジア国際子ども映画祭で杉良太郎特別賞(最優秀賞)を受賞した、茨城県の中等少年院・水府学院の在院生による映像作品『Dream』が上映されていた。


海外のさまざまな刑務所を視察した報告書類!


毎年気になるのが、少年院や少年鑑別所の在院生による創作発表。今年はちょっと数が少なくて残念だった。


女子少年院である丸亀少女の家の、切り絵カレンダー。売ってほしい!


北海道にある日本最北の少年院、月形学園の少年たちによる「きつつきノッカー」。


実際に新人受刑者のチェックなどに使われる「性格検査体験コーナー」は、いつも希望者でいっぱい。


マークシート方式で記入していき、すぐに結果が受け取れる。さすがにかなり的確!


無料でもらえる資料類も、かなり読み応えあり。


少年院や鑑別所の作業を体験できるコーナー。こちらは愛知県の少年院・豊ケ丘学園の絞り染め体験。おばさまたちに大人気だった。


制服着用の記念撮影コーナー・・・子供用のみですが。


革製キーホルダーに、自分で印字できる体験コーナー。


さっそく作ってみました! 下部には「Hiroshima Prison」の文字が。


フードコート(大げさ)の「パークレストラン」では、横浜刑務所名物のうどんと、「プリズン弁当」を販売中!


プリズン弁当・・・ちょっと哀しい。


その脇では網走刑務所が、自慢の付属・二見ケ岡農場謹製の「網走監獄和牛」と和牛弁当を販売中。「監獄和牛」って・・・。 


品質は「A5」! さすがの値段だが、市場価格より、かなり割安。


年配女性軍は和牛をさらっと通りすぎて、交通関係の受刑者を収容する市原刑務所ご自慢の椎茸販売コーナーに直行してました。

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BOOKS

ROADSIDE LIBRARY
天野裕氏 写真集『わたしたちがいたところ』
(PDFフォーマット)

ロードサイダーズではおなじみの写真家・天野裕氏による初の電子書籍。というか印刷版を含めて初めて一般に販売される作品集です。

本書は、定価10万円(税込み11万円)というかなり高価な一冊です。そして『わたしたちがいたところ』は完成された書籍ではなく、開かれた電子書籍です。購入していただいたあと、いまも旅を続けながら写真を撮り続ける天野裕氏のもとに新作が貯まった時点で、それを「2024年度の追加作品集」のようなかたちで、ご指定のメールアドレスまで送らせていただきます。

旅するごとに、だれかと出会いシャッターを押すごとに、読者のみなさんと一緒に拡がりつづける時間と空間の痕跡、残香、傷痕……そんなふうに『わたしたちがいたところ』とお付き合いいただけたらと願っています。

特設販売サイトへ


ROADSIDE LIBRARY vol.006
BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙(PDFフォーマット)

稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。アルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!

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ROADSIDE LIBRARY vol.005
渋谷残酷劇場(PDFフォーマット)

プロのアーティストではなく、シロウトの手になる、だからこそ純粋な思いがこめられた血みどろの彫刻群。

これまでのロードサイド・ライブラリーと同じくPDF形式で全289ページ(833MB)。展覧会ではコラージュした壁画として展示した、もとの写真280点以上を高解像度で収録。もちろんコピープロテクトなし! そして同じく会場で常時上映中の日本、台湾、タイの動画3本も完全収録しています。DVD-R版については、最近ではもはや家にDVDスロットつきのパソコンがない!というかたもいらっしゃると思うので、パッケージ内には全内容をダウンロードできるQRコードも入れてます。

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ROADSIDE LIBRARY vol.004
TOKYO STYLE(PDFフォーマット)

書籍版では掲載できなかった別カットもほとんどすべて収録してあるので、これは我が家のフィルム収納箱そのものと言ってもいい

電子書籍版『TOKYO STYLE』の最大の特徴は「拡大」にある。キーボードで、あるいは指先でズームアップしてもらえれば、机の上のカセットテープの曲目リストや、本棚に詰め込まれた本の題名もかなりの確度で読み取ることができる。他人の生活を覗き見する楽しみが『TOKYO STYLE』の本質だとすれば、電書版の「拡大」とはその密やかな楽しみを倍加させる「覗き込み」の快感なのだ――どんなに高価で精巧な印刷でも、本のかたちではけっして得ることのできない。

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ROADSIDE LIBRARY vol.003
おんなのアルバム キャバレー・ベラミの踊り子たち(PDFフォーマット)

伝説のグランドキャバレー・ベラミ・・・そのステージを飾った踊り子、芸人たちの写真コレクション・アルバムがついに完成!

かつて日本一の石炭積み出し港だった北九州市若松で、華やかな夜を演出したグランドキャバレー・ベラミ。元従業員寮から発掘された営業用写真、およそ1400枚をすべて高解像度スキャンして掲載しました。データサイズ・約2ギガバイト! メガ・ボリュームのダウンロード版/USB版デジタル写真集です。
ベラミ30年間の歴史をたどる調査資料も完全掲載。さらに写真と共に発掘された当時の8ミリ映像が、動画ファイルとしてご覧いただけます。昭和のキャバレー世界をビジュアルで体感できる、これ以上の画像資料はどこにもないはず! マンボ、ジャズ、ボサノバ、サイケデリック・ロック・・・お好きな音楽をBGMに流しながら、たっぷりお楽しみください。

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ROADSIDE LIBRARY vol.002
LOVE HOTEL(PDFフォーマット)

――ラブホの夢は夜ひらく

新風営法などでいま絶滅の危機に瀕しつつある、遊びごころあふれるラブホテルのインテリアを探し歩き、関東・関西エリア全28軒で撮影した73室! これは「エロの昭和スタイル」だ。もはや存在しないホテル、部屋も数多く収められた貴重なデザイン遺産資料。『秘宝館』と同じく、書籍版よりも大幅にカット数を増やし、オリジナルのフィルム版をデジタル・リマスターした高解像度データで、ディテールの拡大もお楽しみください。
円形ベッド、鏡張りの壁や天井、虹色のシャギー・カーペット・・・日本人の血と吐息を桃色に染めあげる、禁断のインテリアデザイン・エレメントのほとんどすべてが、ここにある!

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ROADSIDE LIBRARY vol.001
秘宝館(PDFフォーマット)

――秘宝よ永遠に

1993年から2015年まで、20年間以上にわたって取材してきた秘宝館。北海道から九州嬉野まで11館の写真を網羅し、書籍版では未収録のカットを大幅に加えた全777ページ、オールカラーの巨大画像資料集。
すべてのカットが拡大に耐えられるよう、777ページページで全1.8ギガのメガ・サイズ電書! 通常の電子書籍よりもはるかに高解像度のデータで、気になるディテールもクローズアップ可能です。
1990年代の撮影はフィルムだったため、今回は掲載するすべてのカットをスキャンし直した「オリジナルからのデジタル・リマスター」。これより詳しい秘宝館の本は存在しません!

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捨てられないTシャツ

70枚のTシャツと、70とおりの物語。
あなたにも〈捨てられないTシャツ〉ありませんか? あるある! と思い浮かんだあなたも、あるかなあと思ったあなたにも読んでほしい。読めば誰もが心に思い当たる「なんだか捨てられないTシャツ」を70枚集めました。そのTシャツと写真に持ち主のエピソードを添えた、今一番おシャレでイケてる(?)“Tシャツ・カタログ"であるとともに、Tシャツという現代の〈戦闘服〉をめぐる“ファッション・ノンフィクション"でもある最強の1冊。 70名それぞれのTシャツにまつわるエピソードは、時に爆笑あり、涙あり、ものすんごーい共感あり……読み出したら止まらない面白さです。

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圏外編集者

編集に「術」なんてない。
珍スポット、独居老人、地方発ヒップホップ、路傍の現代詩、カラオケスナック……。ほかのメディアとはまったく違う視点から、「なんだかわからないけど、気になってしょうがないもの」を追い続ける都築響一が、なぜ、どうやって取材し、本を作ってきたのか。人の忠告なんて聞かず、自分の好奇心だけで道なき道を歩んできた編集者の言葉。
多数決で負ける子たちが、「オトナ」になれないオトナたちが、周回遅れのトップランナーたちが、僕に本をつくらせる。
編集を入り口に、「新しいことをしたい」すべてのひとの心を撃つ一冊。

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ROADSIDE BOOKS
書評2006-2014

こころがかゆいときに読んでください
「書評2006-2014」というサブタイトルのとおり、これは僕にとって『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(2008年)に続く、2冊めの書評集。ほぼ80冊分の書評というか、リポートが収められていて、巻末にはこれまで出してきた自分の本の(編集を担当した作品集などは除く)、ごく短い解題もつけてみた。
このなかの1冊でも2冊でも、みなさんの「こころの奥のかゆみ」をスッとさせてくれたら本望である。

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独居老人スタイル

あえて独居老人でいること。それは老いていくこの国で生きのびるための、きわめて有効なスタイルかもしれない。16人の魅力的な独居老人たちを取材・紹介する。
たとえば20代の読者にとって、50年後の人生は想像しにくいかもしれないけれど、あるのかないのかわからない「老後」のために、いまやりたいことを我慢するほどバカらしいことはない――「年取った若者たち」から、そういうスピリットのカケラだけでも受け取ってもらえたら、なによりうれしい。

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ヒップホップの詩人たち

いちばん刺激的な音楽は路上に落ちている――。
咆哮する現代詩人の肖像。その音楽はストリートに生まれ、東京のメディアを遠く離れた場所から、先鋭的で豊かな世界を作り続けている。さあ出かけよう、日常を抜け出して、魂の叫びに耳を澄ませて――。パイオニアからアンダーグラウンド、気鋭の若手まで、ロングインタビュー&多数のリリックを収録。孤高の言葉を刻むラッパー15人のすべて。

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東京右半分

2012年、東京右傾化宣言!
この都市の、クリエイティブなパワー・バランスは、いま確実に東=右半分に移動しつつある。右曲がりの東京見聞録!
576ページ、図版点数1300点、取材箇所108ヶ所!

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東京スナック飲みある記
ママさんボトル入ります!

東京がひとつの宇宙だとすれば、スナック街はひとつの銀河系だ。
酒がこぼれ、歌が流れ、今夜もたくさんの人生がはじけるだろう、場末のミルキーウェイ。 東京23区に、23のスナック街を見つけて飲み歩く旅。 チドリ足でお付き合いください!

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